おしゃれな古民家カフェが持続可能な観光地をつくり出す
伝統的な町並み
京都のように古い町並みが残る場所は、国内外の観光客に不動の人気を得ています。にぎわっている観光施設には、古民家を宿泊施設や飲食施設などにリノベーションしたものが増えてきました。京都の伝統的な町屋も昔ながらの風情を残しながら、中に入るとブランドショップやカフェとして利用されています。古い町並みを残しながらも、うまく転用しているのが人気の秘密です。
日本とギリシャの比較
文化庁が指定する文化財は、東大寺の大仏殿や二条城のように単独の物件を指定するもののほか、1975年の文化財保護法改正により、歴史的な町並みとして貴重な集落を重要伝統建造物群保存地区(以下、重伝建)として、面的に保全しています。現在は全国で126カ所が選定されており、その地区では伝統的な建築様式を守るために、建物の保存義務や素材、色をそろえるなどの細かなルールが定められています。
ギリシャは国土が日本の3分の1程度にもかかわらず、同様の保存地区は900カ所以上に及びます。ヨーロッパは古いものに価値があるという考えがあり、例えばロンドンの賃貸住宅は、築年数の古い方が、賃料が高くなる場合もあります。一方で、日本では京都のような有名な観光地でさえも、重伝建などの町並み保存地区以外では、多くの古い建物が取り壊され、建て替えられています。日本では新しいものの方が良いという風潮があり、古い建物の価値が低くなっているのだと考えられます。
伝統建築を残すには
古い町並みを残していくには、地域の人々が地域にある文化的遺産の価値を理解することが重要です。地元に当たり前のようにあるものは、地元の人よりも外にいる人の方が価値を見出せることもあります。外部から文化的な価値を説明できる人を呼び、地元の人々と交流し、意識を高めていくことが保存を進めるためには必要でしょう。
地元の文化的遺産を大切にしていくことは、持続可能な観光地を作るためだけでなく、ひいては地元の人々がその地域を愛する「シビックプライド」にもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
國學院大學 観光まちづくり学部 観光まちづくり学科 教授 石本 東生 先生
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