日本のアニメ作りが大都市でないとできない理由とは?
アニメは大都市で作られる?
日本の産業は、東京などの大都市に本社(経営管理機能)を置き、地方都市に生産拠点を置くという形が一般的です。しかし、アニメ産業の場合、生産拠点が地方に置かれるケースはあまりありません。国内のアニメ制作会社の実に75%以上が東京都内に集中していることに加え、制作会社同士の分業が非常に発達しているため、大都市が生産拠点としても機能しているのです。人手が足りない場合でも、多くの場合は日本の地方都市の制作会社ではなく、上海やソウルといった海外の大都市の制作会社と協力してアニメ作りが行われています。
日本アニメの原画はデータ化できない
なぜ日本のアニメ産業は、このような特殊な構造をしているのでしょうか?
理由はいくつかありますが、ひとつは全国ネットのテレビ局とスポンサー企業の本社が東京に集中しているためです。もうひとつは、アニメの原画がクリエイターの手描きによるものであり、デジタルデータでは扱えないほど繊細に表現されているからです。つまり、原画をデータ化してネット上でやり取りすることができず、どうしても原画というモノ自体を各所に運ぶ必要があるのです。そのため、制作会社が都内に集中していたほうが分業・物流両面で利便性が高いのです。また東京から離れた場所とやり取りするケースの場合は、人手が多くて人件費の安い海外の制作会社の方が国内の地方都市よりも好まれる傾向にあるわけです。
海外のアニメと比較すると
世界のアニメは、ハリウッドの作品に代表されるように、3Dデジタル技術による制作が少なくありません。そうした欧米型のアニメはIT産業の一種といえます。それに対して、制作過程でクリエイターの手作業や物流が欠かせない日本型アニメは製造業の一種です。現在、日本では年間100本以上の新作アニメが「製造」されています。これは世界に類を見ない数字です。しかし、一方で制作会社の負担が大きく、クリエイターの労働環境の改善が課題となっています。
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國學院大學 経済学部 教授 山本 健太 先生
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