子どもの言語とコミュニケーションを支援する言語聴覚士

子どもの言語とコミュニケーションを支援する言語聴覚士

言葉の発達

多くの子どもは、1歳半くらいまでに最初の1語を話すようになり、その後、言葉の発達が進みます。しかし、そこから大きく遅れるようなケースでは、言語聴覚士が病院や発達支援センターなどで、保健所や保育園・幼稚園と連携し、言葉に対する検査や支援を行っています。発達の遅れには、まったく言葉が出ないケースや、初期の語彙(ごい)は出ても、増えていかないケースなど、子どもごとに違いがあります。またその要因も、発達の遅れにともなうものや聴覚障害によるなどそれぞれです。病気だけでなく、性格の特徴や環境が言葉の発達に影響する場合もあるため、広範囲に詳しく観察して総合的に判断していきます。

コミュニケーションが困難なケース

幼少期に言葉の遅れは見られないのに、成長するにつれてコミュニケーションの問題が明らかになってくるケースもあります。例えばある小学生は、好きな歴史上の武将の名前や活躍した年号などについては止まることなく話し続けますが、嫌いな科目のことを聞くと、「国語は文章の中に人の感情が含まれていないのに読み解かなければならないので嫌いです」と説明して黙ってしまいます。知識は豊富で自己分析もできる一方で、他人の気持ちを読み解くことが苦手なために会話が難しくなるのです。そういう子どもたちは、「学校はどう?」のような曖昧な質問に答えるのが難しく、周りの空気を読んで行動できないこともあります。現在は、このような言葉の問題を抱える子どもたちの言語特性について、臨床経験から分析が進められています。

改善がゴールではない

言語に問題がある子どもたちには、円滑なコミュニケーションの成立をめざして、言語聴覚士が支援を行っています。話が伝わらない経験がコミュニケーションを避ける原因になることもあるので、話す力を身につけて、人のコミュニケーションは楽しいものだと理解してもらうことが最終的な目標です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科 助教 重森 知奈 先生

帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科 助教 重森 知奈 先生

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言語発達

メッセージ

言語聴覚士はまだ広く知られていない職種です。さらに、言語聴覚士の中でも小児を専門にするのは3割程度しかいないため、まだまだ支援がいきわたらない状況です。大学で4年間学び、国家試験に合格すると、病院や自治体の発達支援センターなどに所属して言語聴覚士として働くことができます。言語の側面から一人一人の子どもの成長に携われるところが、言語聴覚士の仕事の醍醐味(だいごみ)です。障害のある子どもとの関わりに興味があるという方は、ぜひ言語聴覚士をめざしてください。

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