医学から文学まで、多様な情報を解析し新しい価値を見出すサイエンス
がんになる確率もわかる
情報社会に生きる現代人は、多様な情報やデータに接しています。それらを収集・解析し、価値を見出す学問が、データサイエンスです。医学や生物学、薬学だけでなく、法学、文学の分野でも、データサイエンスが活用されています。医学分野では、多くのがん患者の遺伝子データを解析し、がんを引き起こす遺伝子変異が明らかになりつつあります。ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、乳がんになる確率が高いとわかり、予防のために乳房を切除しました。その判断の根拠には、この研究の成果が使われています。
データサイエンスができることとは
骨粗しょう症の原因の探究も、データサイエンスで行われています。骨を形成する骨芽細胞も脂肪細胞も同じ幹細胞から変化したものであり、何らかの原因で骨芽細胞になるべき場所で脂肪細胞へと分化してしまうと骨粗しょう症になってしまいます。そこで、幹細胞の変化の仕組みを知るために、幹細胞の分化の過程などのデータ解析方法についても研究が進められています。
文学の分野では、有名な小説の感情の揺れをグラフ化すると、大きく6パターンに分類できることがわかりました。この手法を用いると、長編小説を絵本に改編した時、感情の揺れなどが再現できているか、客観的に判断することもできます。
コンピュータが新しい資源を作り出す
人間に役立つ新しい資源も、データサイエンスによって生み出せるかもしれません。例えば、腸内細菌や海にすむ未知の微生物集団を分離・培養せずに、まるごと解析します。これを「メタゲノム解析」と呼びますが、こうして得た遺伝子情報をディープラーニングで機械学習させると、人間に役立つ遺伝子の資源を生み出せると考えられているのです。
これまで人間に役立つ遺伝資源は、生物多様性に満ちたアマゾンなどの熱帯雨林に多くありましたが、データサイエンスが発展すれば、新しい資源をコンピュータで人工的に作ることができると期待されています。
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関西大学 総合情報学部 総合情報学科 教授 竹中 要一 先生
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