情報化社会の未来を決める「哲学」と「倫理」
現代社会に求められる哲学と倫理
今、各地で気軽に哲学的な対話を楽しめる哲学カフェが開かれ、中高生、サラリーマン、自営業、主婦、退職後世代など、多くの市民が参加し、身近な関心や先端技術との付き合い方などについて、議論や意見の交換をしています。また、大学1年~2年ごろに受講する教養科目には、必ずといってよいぐらい哲学や倫理学の授業があり、科学技術を学ぶ学生も、医療や看護を学ぶ学生も、法や経済を学ぶ学生も教養としてこれを学びます。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったテクノロジーの進化が著しい今だからこそ、哲学・倫理学が必要とされているのです。これはどういうことなのでしょうか?
技術革新が拓く未来の可能性
情報社会と言われる現代、キャッシュレス化やAI化、医療技術の発展など社会は大きく変動しています。教育や政治にAIが関わるときが来るかもしれません。ビッグデータを利用してAIで結論を導くとき、そのプロセスはブラックボックスであり、エンジニアを含めて誰にもわかりません。では、経緯のわからない決定に対して、誰がどう受け止め、誰がどう責任をもつべきなのでしょうか? また、遺伝子の研究が進むと、若返りができたり、人工臓器が簡単につくれたり、親が望む通りの子どもにするデザイナーズベイビーが生まれたりするかもしれません。そのとき、社会にはどんな受け止め方、そしてルールが必要なのでしょうか? それを考えるのが倫理であり、そのベースには「人間とは何か」という哲学があります。
どんな未来にするのか
人は技術の恩恵なしでは生きていけません。一方、人は地球の自然環境のなかで進化してきた生物でもあります。人間と、自然や技術とのバランスをどうとらえるかが大切です。科学技術者も、市民も、ただ時代に流されるのではなく、どんな方向にどう進んでいくかを考えることが大切な時代なのです。だから、自然や技術と適切な関係を結び、よりよい社会をつくるためのベースとなる考え方である哲学や倫理が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 情報学部 情報社会学科 教授 吉田 寛 先生
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