学校で教えたい! メディアリテラシー

学校で教えたい! メディアリテラシー

「読み書き」は活字だけじゃない

曇り空と青空の画像を並べ、「清々(すがすが)しい方はどちらでしょうか?」と聞くと、青空と答える人は多いでしょう。文字がない視覚情報も、人に意味や印象を伝えています。国語で問われるのは活字を読み書きする力ですが、SNSなどから多くの情報があふれる今は、音声や映像情報も活字と同様に「読み書き」する能力が大事な時代です。情報を多面的、客観的に解釈したり、どのように伝わるのか影響を考えながら発信したりする、情報の読解能力を「メディアリテラシー」といい、情報社会に生きる人間として必要な能力です。

スリムなモデルをどう思う?

カナダやヨーロッパなどではメディアリテラシーが授業に取り入れられています。日本では1980年代後半から話題になりましたが、教育現場ではあまり採用されていません。研究授業が行われている段階ですが、その授業では、子どもの視野が広がるという成果がみられました。
中学校での例です。低カロリー飲料のCMについて、「出演女性がスリムなのは、飲んだ結果なのか、スリムな体型を維持したいから飲むのか」と問いかけました。生徒の意見の中に、「CMではスリムが望ましいというイメージになっているが、スリムなことが本当にいいの?」というものがありました。流れてくる情報をうのみにせず、立ち止まって考えることができれば、フェイクニュースに触れた場合などでも安易に拡散しないはずです。

カギは教材や評価の仕方

学校の先生は忙しく、教科書にないことは教えにくいのが現状です。だからこそ「インターネットの情報を読み解く手順」といった教材や、どの教科のどの単元で使えるかという手引き、何より、評価方法を用意できるかどうかが、教育現場に広がるカギとなるでしょう。学習評価は難しく、世界的にもまだ確立されていません。子どもたちの発言や学びの記録を丁寧にとらえて評価しようという仕組みづくりが進んでいくとみられます。誰もが情報に触れる時代だからこそ、子どものうちからの教育が大事なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

弘前大学 教育学部 学校教育講座 准教授 森本 洋介 先生

弘前大学 教育学部 学校教育講座 准教授 森本 洋介 先生

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教育学、社会学、メディア論

先生が目指すSDGs

メッセージ

学校の中で教わる範囲におさまらず、幅広く世界に興味を持ってください。日本で不自由なく勉強できる環境にいるとしたら、それが難しい人たちにも目を向けてください。自分だけを見ていると気づかないことが、世の中にはたくさんあります。
高校や大学は通過点です。フルマラソンの最中、10km地点をゴールだと思う選手はいるでしょうか。学生時代は人生の中盤であり、やろうと思えばなんでもできる状況なのです。社会に出た時にどうなりたいのか考えながら、楽しく悔いのない高校生活を送ってください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

弘前大学に関心を持ったあなたは

弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。