情報社会の指針となる情報倫理
情報倫理学とはどんな学問分野か
倫理というと、『電車の中で高齢者に席を譲りなさい』など、道徳的なものをイメージすることが多いと思いますが、実際の研究対象はとても広範囲にわたります。倫理学は、世の中で起きているさまざまな問題を集め、『物事の善悪と人間の判断がどうやって成立しているのか』を分析する学問だといわれています。「情報倫理学」は、この倫理学の分析手法を応用して、世の中に流通している情報の中で何が問題となっているのか、何が情報の正しい取り扱い方なのかを考える学問分野です。
倫理学の手法で情報社会を考える
それでは、実際に問題となっている個人情報について、情報倫理学ではどのように考えていくのかを紹介しましょう。他人の個人情報を勝手に流すと良くない、といわれています。それはプライパシーという考え方の中に、『自分に関する情報は自分のものだ』と言う基本的な見方があるからです。ですから、誰かが勝手に個人情報を流すと、それは『私が持っている情報をコントロールする権利を侵害している。だからあなたが悪い』という主張が成り立つのです。つまり、他人のプライバシーを侵害しているから正しくないということになり、その行いが正しいのか正しくないのかを判断することができるのです。
では、なぜ正しくないと言えるのかは、その先の所有の問題を考えることにつながります。『あなたは私の情報に対する所有権を侵害しているから正しくない』ということになります。このようにして、正しいとか正しくないとかの理由付けが繰り返されていきます。そういった理由付けを考えるのが、情報倫理学の仕事なのです。
情報社会の指針となる考え方を提供する
社会で起こった問題を「正しいのか、それとも正しくないのか」と判断するための基準作りが日々行われています。最近は、情報に関する問題がますます増え、対策も急がれています。情報倫理学は、その対策の指針となる考え方を提供している重要な学問分野であるといえるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。