ネット上での投票を完全に匿名にするには?
電子投票に必要な技術「匿名通信」
選挙の際の投票は、投票所で行うものですが、投票がインターネットでできれば、どうなるでしょうか。自宅で投票できれば、とても便利です。ただし、ネット上での投票、電子投票を実現するためには、クリアしなければならない課題があります。それは、匿名性の確保です。
選挙の投票は、無記名が原則です。インターネットを使った投票でも、匿名性を守る必要があります。しかし、メールを送る要領で投票すると、投票した人物は誰なのか簡単にわかってしまいます。
メールに必ずついているアドレス情報
メールを匿名で送るのは、インターネットの特性上かなり難しいのです。ネットでやりとりされるメールは、複雑な経路をたどって届けられています。極端な話、教室で隣にいる友だちに出したメールが、地球の裏側を経由して届けられているケースもあるぐらいです。
そうした経路で送られるメールですが、きちんと目的の相手に届くのはなぜでしょうか。それは、メールには送り手と受け手の情報が必ず記載されているからです。メールのヘッダー情報(通信時にデータの先頭に付加される制御用情報)を表示させてみると、どれだけ複雑な経路をたどっても、送り手と受け手は必ず明記されていることがわかります。
送り手情報をわからなくする技術
送り手の情報がついている限り、送り手は必ず特定できます。つまり普通のやり方では匿名でメールを送ることはできないのです。そこで、匿名性を確保するために考え出された手段は、特別な技術を使って複数のポイントを中継する方法でした。
仮にAからBにメールを送るとします。このときAとBの間に、中継点Cを挟みます。Cに届いたメールはAからのものだとわかりますが、CからBにリレーする時点でAの情報を消すのです。その結果、Bに届いたメールの本来の発信者はAなのですが、BからすればCから届いたようにしか見えません。間に挟む中継点の数を増やせば、複雑さを増すことができます。この方式を使えば、ネット上でも匿名性を確保できるのです。
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関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 准教授 河野 和宏 先生
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