ごみ・環境問題を解決するためのカギ「バイオマス資源」を活用せよ!
進まない植物性バイオマス活用
植物の細胞壁に含まれている「セルロース」という成分があります。グルコース(ブドウ糖)がたくさんつながった構造で、酵素でそのつながりを切ればグルコースを生産することができます。グルコースは、発酵させてエタノールという燃料になるほか、さまざまな食品・工業製品に使われる需要の高い物質です。
植物性のバイオマス(生物資源)は、間伐材、剪定枝、稲や麦のわら、野菜の食べられない部分など、林業、農業、食品加工業から大量に排出されています。その多くは利用されずに捨てられ、その処理が問題になっています。バイオマスに含まれるセルロースを利用できれば、資源の有効活用ができるのですが、なかなか普及が進んでいません。
環境にはやさしく、コストはおさえて
植物性バイオマス活用が進まない理由には、バイオマス中のセルロースを取り出すための「前処理」にかかるエネルギーとセルロースをグルコースに分解する酵素である「セルラーゼ」が高価なことが挙げられます。このようにセルロースの分解にお金がかかり、普及しないのです。
この問題を解決するため、環境にやさしく低エネルギーな前処理法やバイオマスそのものを原料にしてセルラーゼを生産する微生物を培養し、安く大量にセルラーゼをつくる方法が研究されています。
安いセルラーゼがバイオマス活用を加速する
セルラーゼはグルコース製造だけに使われるものではなく、野菜や果物の液化処理、洗濯洗剤の洗浄力向上などのためにさまざまな製品にも活用されています。また、セルラーゼを植物と混ぜ合わせると分解されて液状化し、体積が減るので、セルロースを主成分とする全てのごみ処理を楽にするためにも使えます。
バイオマスを使ってセルラーゼを量産すること自体が植物性バイオマスの有効活用です。さらにできたセルラーゼを使って植物性バイオマスから安価なグルコース関連製品が作られようとしています。このように植物性バイオマスの活用が加速すれば、資源の問題、ごみ問題の解決につながると期待されています。
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徳島大学 生物資源産業学部 生物資源産業学科 准教授 佐々木 千鶴 先生
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