「バイオイメージング」で数学や物理と融合する生物学
21世紀の生物学を変えたバイオイメージング
生物学では、とても大きな技術革新が起こっています。そのひとつが「バイオイメージング」です。これは21世紀に入ってから爆発的に発展した技術で、ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士がオワンクラゲを使い発見した蛍光タンパク質を主に使います。それを研究対象の細胞に組み込んで細胞の核や神経などを可視化し画像を作成する技術です。1990年代に、このタンパク質を作る遺伝子が同定されたことで、現在では広く普及しています。
バイオイメージングはどこが革新的か
以前の顕微鏡では、細胞の核だけとか縁だけといった特定のものを見るのはとても大変でした。しかし、蛍光タンパク質のおかげで、好きな分子だけを見られるようになりました。現在はいろいろな色の蛍光タンパク質ができているので、複数のものを同時に見ることもできます。
また、この方法では細胞を壊さずタンパク質を見ることができるので、時間の経過でどう変わるかを見ることもできるようになりました。
この技術によって、今まで見えていなかった現象が見られるようになりました。例えば魚の発生において、初期の細胞分裂はリズムが同期しているけれども、ある時期になるとバラバラになることや、別の研究では、従来見ることのできなかった、脳の深い場所の神経構造などがわかってきたのです。
数学・物理学との融合
これまで神経や細胞のミクロな生物学はこれまで生物学の専門家だけのものでした。しかし、数学者や物理学者など、非生物学者がイメージングのデータを介してこうした研究にアクセスできるようになり、新たな視点から生物学へのアプローチが行われるようになりました。膨大な画像データを解析し、神経や細胞一つひとつの活動がどう関連するかを調べることができるようになりました。
こうした研究がうまくいけば、神経活動や発生の振る舞いを予測する方程式のようなものが立てられるかもしれないと考えられています。
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