単純作業の意味を理解することで、作業療法の質が高まる!
作業療法士は社会的機能の回復を手助けする
理学療法士と作業療法士の違いとは何でしょうか。理学療法士は、起き上がる、歩く、座るなど基本的な動作機能の回復を手助けします。一方の作業療法士は、食事をする、料理をするなど、社会的機能の回復をサポートします。
作業療法の世界も日進月歩で進歩しており、感覚、認知、運動と日常生活動作(ADL)の関係性を可視化する、つまり行っている作業内容を定量的指標で表現する研究が続いています。
物を握るときにかかる力を計測してわかったこと
例えば私たちが物を握る際、触る瞬間はそっと触れ、そしてギュッと握って重さがどれくらいかを認知したあと、一定の力で物を握り続けるというステップを踏みます。一方、加齢などで首の部分の骨、頸椎(けいつい)が変形する頸椎症の患者さんは、指先の感覚が鈍くなっているため、必要以上に物を強く握ってしまうことがわかりました。
また、発症から1週間経っていない脳卒中の患者さんは、親指と人差し指が等しい把持力(はじりょく)、つまり物を握ったときに離さないようにする力を保てず、空間で物を保持できません。通常は同じ場所に同じ力をかけ続けることで物を保持できるのですが、脳卒中の急性期の患者さんは、力をかける場所がぶれてしまうからです。この力をかける場所を圧中心点といいます。これらのケースは、把持力や圧中心点にかかる力を数値化する研究により判明しました。
患者さんに理解してもらうことが回復の助けに
このように数値データで可視化することで、単純作業として行っていたことの意味がわかり、より患者さんにとって効果的な療法ができます。つまり作業療法士自身がその作業の意味を理解し、その理屈を患者さんに伝えて理解してもらうことが、患者さんが自らを変えようとするきっかけになるのです。
作業の意味を可視化する研究は、国内の大学でもまだあまり行われていません。よって、今後さらに注目される研究分野になることは間違いありません。
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 医学部 保健学科 教授 李 範爽 先生
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