音声認識とAIの技術を使い、高齢者の見守りを
声や音には多くの情報が含まれている
声には言葉だけでなく、感情の情報も含まれています。ストレス下では声の調子が変わりますし、統合失調症の傾向があると、数字の読み上げ方などに違いが表れます。あるいは認知症の兆候が見られると感情的になりやすく、語彙(ごい)が少なくなるといった特徴が表れます。また、いびきや歯ぎしり、食事中の咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)など、人は日常生活の中でさまざまな音も発しています。そこで音声認識の技術を使い、声や音を高齢者の見守りに使えないかと研究が進められています。
音で行動の詳細を把握
音の採取には、皮膚接触型マイクを使います。振動音を直接採取するため咀嚼や嚥下の音を拾いやすく、付けた本人の音を特定できるうえ、騒音に強いという利点もあります。分析に用いるのは、スマートフォンにも搭載されているような音声認識技術です。最新のAI技術であれば、音だけで飲食なのか、会話なのか、またその内容など、高い精度で行動を区別できます。言語の内容から認知症の兆候を見ることができるのはもちろん、介護施設での食事介助にも役立ちます。高齢者が食事をちゃんと噛んで飲み込んでいるのか、こんな当たり前のことですが、外から見ているだけではよくわかりません。音の情報を利用すれば見えない体の中の行動もしっかりと可視化することができるのです。
音声認識の可能性
食事の内容が分かれば、摂取カロリー量も推定できるため、欧米では音声認識を肥満防止に役立てようという動きも見られます。また、工場であれば、部品の落下音など作業ミスが音に表れますから、音を自動検出することでヒューマンエラーを防げる可能性もあります。
画像でも同様のことはできますが、音よりもプライバシー問題に関わりやすく、何よりデータが大きいため、分析に巨大な計算機を必要とします。音は、声の例のように言語的情報や人間性、感情の動きが読み取れるなど、データ量が小さい割に多くの情報を持っており、工夫次第でさまざまなことに役立てられるのです。
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愛知産業大学 造形学部 スマートデザイン学科 教授 西村 雅史 先生
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