化粧の出来栄えは気持ちを左右し、行動にも影響する
利き手と非利き手で眉を描いてみると
あなたは化粧をしたことがありますか。「可愛く、きれいに見られたい」という気持ちから化粧を始める人もいるでしょう。特に女性は、大人になるにつれ、それが日常的な行為になり、外出する前には必ず化粧をするという人が多くなります。普段から化粧をしている人に対する、こんな実験があります。
まず、普段どおりに利き手で眉を描いてもらいます。そして、アンケートに答えた後にいったん化粧を落としてから、次に非利き手で眉を描いてもらい、同じようにアンケートに答えます。第三者にはどちらの顔もほとんど変わりなく見えますが、本人には心理的な変化が起こります。アンケートを分析すると、非利き手で眉を描いたときは対外的な自信や積極性が落ちているのがわかります。つまり、けがや病気で体が不自由になったり、高齢化にともない不器用になったりすると、化粧をすることに対する自信をなくし、ほかの行動までもが消極的になってしまう可能性があるのです。
「できない」を「できる」に変換する
ここで、化粧の中でも目を華やかにすることを考えてみましょう。アイライン、アイシャドウ、マスカラなどが代表的です。目の際にペンシルで線を引くアイラインは目をはっきり見せるために効果的ですが、難易度が高く、手が震えるとうまく描けません。ですから、病気や高齢になると描けなくなってしまうことがあります。しかし、アイラインから比較的簡単なアイシャドウに変えることで目を華やかに見せる効果が感じられるかもしれません。大切なことは、これまでとやり方は違っても「できない」を「できる」に変換することなのです。
「些細なこと」こそできるように
些細なことができずに嫌な思いをしたことがありませんか。作業療法士は、日常生活の中で安全に楽に行動できるよう治療や支援を行う国家資格の専門職です。作業療法のイメージとして「手工芸」を挙げる人が多いですが、実際は少し違います。作業療法士は、そのような些細なことこそできるように支援する専門職なのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科 准教授 石橋 裕 先生
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