重度障害者のQOLを上げる ヒューマンインタフェース
人の動きから使いやすさを
人間工学は、人の動作を計測・分析して、より使いやすい製品やシステムを開発する研究領域です。人間工学の主要分野に、人と機械をつなぐ「ヒューマンインタフェース」があります。コンピュータへの入力と応答もヒューマンインタフェースの一つであり、主にキーボードやマウスが使われますが、障害のためにそれらの手段が使えない人にはほかの装置が必要です。
触れないであやつる
筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病を患う人が最後まで動く部位は目です。そのため、これまでにも視線を使った入力装置が開発されていますが、赤外線を目に照射して、瞳孔の位置から注視点を調べる方法が使われています。このような装置を使わずに、一般的なカメラで黒目の位置から注視点を測定する方法も提案されていますが、黒目ではなく、まぶたの形状に着目した研究が進んでいます。視線が動くとまぶたも動き、形状が変わります。この特徴を利用し、まぶたの形状から注視点を推定する仕組みになっています。視線以外にも、指先の僅かな動きをボタン操作に反映させるなど、装置に“触れないであやつる”ことが可能なインタフェースが開発されています。
遠隔でボッチャを楽しむ
パラリンピックの正式種目であるボッチャは、ボールを投げたり、転がしたり、相手のボールに当てたりして、白いボールに自分のボールをいかに近づけるかを競うスポーツです。手でボールを扱えない人は補助器具を使いますが、重度障害者の中には補助器具を使ってもプレイすることが難しい場合があります。そこで、ボタン一つで、思った方向に、勢いを調整して、自分のタイミングでボールを転がすことができる装置が開発されました。ボタンは目や指先のわずかな動きで代用することができます。装置は遠隔でも操作でき、離れた場所からもプレイが楽しめます。
同じ病気でも、障害の状況は人によって異なります。また、病気の進行により、同じ人でも状態は変化していきます。そのような違いや変化に対応することも研究の一つです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。