中国語の文献を求めてフランスへ? 言語の歴史を探る

中国語の文献を求めてフランスへ? 言語の歴史を探る

漢文は現代の中国語と別物?

いわゆる「漢文」は、書き言葉として日本に伝わった古典中国語で、現代で使われている中国語とは、発音や単語などが大きく異なります。中国人にとっての「漢文」は、日本人が「古文」を読むような感覚だと言えるでしょう。数千年の時間をかけて、中国語も変化してきているのです。その変化を物語るのは歴代の文献であり、それらをもとに、変化の仕組みと背景を探る研究が行われています。

世界各地にある中国語文献

フランスを始めとするヨーロッパの図書館には、中国の古い書物が数多く保存されています。明(みん)や清(しん)の時代の中国には、ヨーロッパから多くのキリスト教宣教師がやってきました。彼らは布教先について学ぶために中国のさまざまな書物を集め、自らも中国や中国語についての記録を作りました。このとき宣教師たちが持ち帰った文献が、ヨーロッパ各地に今も残っているのです。中には中国には現存していない貴重な書物もあります。中国語の歴史を研究する上では、世界中に散在している中国語の文献が手がかりになることもあります。

外国語との接触で変化も

中国語には、外国語との接触によって変化した事例があります。その代表が、中国の北を取り囲むように分布しているアルタイ諸語の影響です。アルタイ諸語は日本語との類似点が多く、例えば語順はSOVが基本です。一方、中国語の語順はSVOで、むしろ英語に似ています。
モンゴル帝国の一部となった元(げん)や、ツングース系の満洲族が支配した清の時代に、中国語はアルタイ諸語とさかんに接触したと考えられます。現代の北京語にも満洲語由来の単語があり、異民族の言語に影響を受けていることがわかります。アルタイ諸語の影響は単語レベルにとどまらないかもしれません。中国の東北地域や西北地域には、SOVの語順を基本とする方言があります。これが中国語の内部で自発的に起きた変化なのか、アルタイ諸語の影響を受けた結果なのか、さらなる研究が求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸市外国語大学 外国語学部 中国学科 教授 竹越 孝 先生

神戸市外国語大学 外国語学部 中国学科 教授 竹越 孝 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

中国語学、言語学

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路について考えるとき、「将来の夢を持たなければ」と焦らなくてもよいと思います。偶然見た本や映画、授業で聞いた話、人との出逢いなどから、ピンときたテーマに熱中しましょう。
私は若い頃いろいろなものに熱中し、その中でたまたま出逢ったテーマを今でも追いかけています。振り返ると、多角的に学んだことが研究者としての道につながったと感じますし、きっかけというのは後から気づくものかもしれません。さまざまな模索の中から自分の興味を満たす鉱脈を見つけ、それを追究していってほしいと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸市外国語大学に関心を持ったあなたは

神戸市外国語大学は、外国語並びに国際文化に関する理論と実際を教授研究し、高い外国語能力、広い国際知識、深い法・経・商等の基礎的教養を具えた、人格の円満な、国際的人材を育成すると共に、地方における特殊な学術研究の中心として、文化の発展向上への寄与を目的としています。外国語の会話の中で問われるのは、その人の持つ教養、知識、さらには人間性であり、実用の語学とはそうしたものの上に立っています。未知の世界、新たな可能性に向かって歩み出したいという意欲に燃える若い人たちの期待にこたえうる魅力的な大学です。