言葉の習得と異文化理解に大きな影響を与える「思考スタイル」とは
話し方の違い
日本では「こんにちは」と口に出して挨拶することは多くありませんが、フランスでは「こんにちは」を言わずに会話が始まることはありません。また日本では相手の話を聞いているときに無言でうなずくことは一般的ですが、フランスで同様の態度をとると「会話を拒否している」と見なされてしまいます。さらに細かく会話を分析すると、はじめは冗談や名前の呼びかけからスタートし、本題を切り出して結論に至る、といった一連の流れも、国によって大きく異なります。こうした違いには、その言語が話されている国の価値観、考え方などから形成される「思考スタイル」が大きく影響しており、思考スタイルの違いは例えばフランスとカナダといった同じ言語を話す国の間にも見られます。
論文の構成
会話だけでなく、論文の構成にも「思考スタイル」の違いがはっきりと表れます。日本の小論文では、まず自分の「主張」を述べた後、その根拠となる見方を本論として挿入し、結論で「それでもやはり」と自己の主張の正しさを述べます。これに対してフランス式の論文「ディセルタシオン」では、導入で「概念の定義」「問題提起」「問いによる全体構成の提示」を行い、次に「定立」「反立」「統合」といった弁証法を用いた「展開」が行われ、最後に全体の議論のまとめと結論だけでなく、次の課題も提示して終わります。
言語習得と異文化理解
言語習得と異文化理解について考えるうえで、こうした「思考スタイル」の違いを明らかにすることは、非常に重要な意味を持っています。外国語を学ぶうえで、語彙(ごい)や文法を覚えることはとても大切です。ただし、それらを完全にマスターし、日本語を上手に翻訳することができたとしても、その言葉を母語とする人とうまくコミュニケーションが取れるとは限りません。語彙や文法の学習と並行して、相手の「思考スタイル」を理解・習得することで、言語を用いた異文化間のコミュニケーションがよりしやすくなるのです。
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先生情報 / 大学情報
順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 逸見 ヴィアート クロエ 先生
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