ダイナミックに動く! 「新・ミトコンドリア」の実像
マルチ機能なオルガネラ
多くの「生物学」の教科書では、俵型のミトコンドリアの絵が載っています。しかしこれは、ミトコンドリアの一時を模式的に描いたものにすぎません。実際のミトコンドリアは、細胞内でネットワーク状に広がっており、絶えず分裂と融合を繰り返す非常に動的な細胞小器官です。
また、ミトコンドリアにはエネルギー生産の働き以外にもさまざまな役割があることが分かってきました。細胞の生存や、カルシウム濃度の調節、免疫応答、情報伝達などその機能は多岐に渡っております。そしてこれらの生理機能は、ミトコンドリアの動きと深く関わっていると考えられています。
免疫応答における司令塔
細胞がウイルスなどの病原体に感染すると、「感染した」という情報を細胞内に存在する受容タンパク質が感知します。するとその情報がミトコンドリアにまで届けられ、ミトコンドリアを起点とした免疫応答反応が発動します。それら反応により、ウイルスを殺すインターフェロンや、周囲の細胞に感染を知らせる炎症性サイトカインなどが作られることで免疫反応が起こります。つまりミトコンドリアは、免疫応答における司令塔のような役割を担っていると言えます。
現在、ミトコンドリアの動きと免疫応答がどのような関係にあるのか研究されています。もしかすると、ミトコンドリアは細胞内を動き回ることでウイルスの感染をいち早く察知するためにパトロールしているのかもしれません。
動きのメカニズムに迫る!
ミトコンドリアの動きは、タンパク質や代謝産物などの多くの分子群が関わっています。これらの分子を「見える化」し、各分子同士の相互作用などを観察してそのメカニズムに迫っています。一方では、ミトコンドリアの形や動きを調節すると考えられるタンパク質について、それらタンパク質が作られないよう変異細胞を作製し、実際にミトコンドリアの様子を観察することで、タンパク質の役割を確かめる方法も行われています。
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福岡大学 理学部 化学科 教授 小柴 琢己 先生
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