若い女性に多い「摂食障害」の原因と治療法を考える
摂食障害とはどんな病気か
若い女性に多い精神疾患の一つに「拒食症」があります。必要な食事量をとらないために、体重が極端に減ってしまう病気です。背景には、痩せた細い体こそが美しいとする偏った美意識の蔓延(まんえん)があり、痩せることを過度に奨励する社会的な風潮があります。若い女性が、痩せるためにダイエットを始めたことが、こうした摂食障害を発症するきっかけになることは珍しくありません。
ダイエットをしている人が皆、摂食障害を発症するわけではありません。大抵の場合、ダイエットは失敗します。それは、食べる量が少なすぎて体が飢餓状態になると、自然と体が食べ物を欲するからです。ダイエットの失敗は、健康の証でもあるのです。
悩みの存在が大きな原因
ダイエットで体が飢餓状態になっても、過度な食事制限が止まらないのは、ほかにもっと大きな悩みがある場合もあります。食べなければ体重は減りますから、達成感が感じられます。そして今度は、本来の大きな悩みから逃げるために、ダイエットの達成感を求めるようになるのです。
一方、過食に転じるタイプもあります。体の飢餓的な状態に対し、脳がSOSを発して、食べることに対する強烈な衝動を呼び起こすのです。この場合は、食べたことに対する罪悪感にさいなまれ、「食べては吐く」という行為を繰り返してしまいます。
臨床心理士の大切な仕事
こうした摂食障害の人の多くは、痩せているのに太っていると思い込む「認知の歪み」があることも少なくありません。また、自分が摂食障害である自覚がないことも多く、栄養失調から命を落とす例もあります。心だけでなく、体も深く傷つけてしまうので、決して軽視できません。
しかし、適切な栄養療法と心理療法によって、完治は可能です。このときに活躍するのが、精神科医と公認心理師・臨床心理士です。公認心理師・臨床心理士は、疾患についての医学的な知識を持って、患者一人ひとりの悩みに寄り添い、心身両面にわたる健康を取り戻す手助けをする大切な仕事なのです。
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先生情報 / 大学情報
跡見学園女子大学 心理学部 臨床心理学科 教授 宮岡 佳子 先生
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