法律を使って健康や医療に関わる社会問題を考える「医事法」とは
医事法は新しい分野
憲法、民法、刑法──きっと一度は聞いたことや習ったことがある法律でしょう。法学部では、これらの法律を勉強するだけではありません。社会状況の変化にともない、近年になって必要とされはじめた新しい法学の分野があります。そのうちの1つが医事法です。医事法とは、健康や医療に関わる社会的な問題について、憲法や民法・刑法などさまざまな法律を使って解決策を探っていくものです。例えば、終末期医療や生殖補助医療のほか、再生医療、救急医療、災害医療、医療事故、臓器移植などが研究の対象になります。
例えば、病院で起こる取り違え事故……
病院で起こる問題の1つに取り違えの事故があります。1950年代に東京都の病院で赤ちゃんの取り違え事故がありました。その約50年後の1999年に、今度は横浜市の病院で肺の手術を受ける患者さんと心臓の手術を受ける患者さんを間違えて手術をした事故がありました。これらの事故は何が原因だったのか、間違えられてしまった赤ちゃんや患者さんに生じた被害をどうすれば補うことができるのか、どうすればこういう悲劇的な事故を防ぐことができるのか、ということなどを法律を使って分析して、一つひとつ考えていきます。
医事法の、現在の、そしてこれからの3つの課題
医事法には、大きく3つの課題があります。1つめは、2025年・2030年問題です。2025年には75歳以上の高齢者が約5人に1人となり、2030年頃には死亡者数がピークに達するという予想もされています。そうなった時、終末期医療が問題となります。そこには安楽死や尊厳死・看取りの問題も出てきます。2つめは、再生医療です。iPS細胞が開発されたことで、倫理的な問題をクリアした細胞による再生医療の研究が進められています。しかし、その裏側には、臓器移植や生殖補助医療、不妊治療に関わる問題が隠れています。そして3つめは、情報化が進む中での、医療における個人情報の取り扱いや、AI(人工知能)の活用など医療の産業化に向けた課題です。
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明治大学 法学部 法律学科 准教授 小西 知世 先生
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