近赤外線を照射して、生体内部の断層画像を測るOCT技術とは?
生体内からの反射光を高感度に検出
医療の現場で、体内の状態を画像で調べる方法として、超音波(エコー)検査がよく知られています。これに対して、近赤外線領域の微弱光を生体に照射して内部の断層画像を測る技術がOCT(光コヒーレンストモグラフィー)です。空間の分解能力が高いので、より細部まで検査できて、超音波(エコー)を用いる方法に比べてより細かい1~10マイクロメートルレベルの細かさで生体の内部構造を見ることが可能です。
深い部分の断層画像が課題
OCTで使用するのは、人体に比較的入りやすい、波長が0.7~1.3マイクロメートルの弱い光です。エックス線検査などに比べて体に害がなく、すでに眼科では実用化が進んで、網膜の状態をその場で詳細に診断できるようになりました。また光ファイバーを用いて血管内壁の断層測定を行うこともでき、脳神経組織への応用研究も期待されています。
しかし、OCTでは直接深い所が見えないという課題もあります。光を当てて直接測定できるのは表面から3ミリくらいまでで、それより深い所を直接測定することはできません。
例えば脳梗塞を発症し、意識がない時、脳の深部を検査してリアルタイムで知ることができれば、より適切な処置や、有効な薬の開発も可能になります。生体へのダメージが少ない低侵襲的な方法で脳の深い部位を診断するための、細い針状のツールの研究開発が世界中で行われています。
多様な医療現場での活用に期待
がんの手術にもOCTの応用が期待されています。がん細胞が正常組織にどのぐらい広がっているのかは、患部を開いても目視で瞬時に判断するのは容易でないのですが、手術中に周辺組織の断層画像を見ることができ、がん組織が同定できれば、より正確に切除できるようになります。
また、インターネットと結びつければ、例えばひとり暮らしの高齢者がOCTの器械をのぞき込むと、その人の網膜の断層画像が病院へ送信され、適切なアドバイスが得られるなどといった遠隔医療の進歩にも貢献できるでしょう。
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山形大学 工学部 情報・エレクトロニクス学科 教授 佐藤 学 先生
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