粒子の不規則な動きを予想! ランダムウォークの研究
不規則の中に規則性が見えてくる
不思議なことに、ランダムな粒子の運動をたくさん集めてくると規則性が見えてきます。この規則を使ってランダムな現象を予測する学問が統計学で、現代社会の様々なところで役に立っています。ランダムウォークの研究が進展すれば、難しい計算が必要であった数値を簡単に求めることができたり、様々な現象やデータに隠れている、普通の人が気づかないような傾向を見つけ出して将来を予測できるようになるかもしれません。
次元によって変わる動き
相対性理論で有名なアインシュタインは、ランダムな粒子の挙動を表す方程式と、熱の挙動を表す方程式が同じであることを明らかにしました。つまり、ランダムな粒子の動きを調べることで、物体の熱の伝わり方がわかるのです。ランダムな粒子の挙動は、2次元と3次元では大きく異なることが知られています。そのため熱の挙動も2次元的な物体と3次元的な物体とでは挙動が大きく変わってしまいます。こういった現象は電波などの波動にも起こることが知られています。また、多様体と呼ばれる曲がった図形の上ではランダムに動く粒子なのにある方向に動きやすい、といったような新しい現象の解明が現在も行われています。
ランダムウォークの可能性
ランダムウォークにはほかにもまだ研究が進んでいない問題が存在します。例えば川のように流れを持った空間の中で熱はどう伝わるのか、といった問題です。空間そのものに動きがあるため、熱が周囲から影響を受け、計算がより複雑になります。もし動きのある空間における熱のランダムな動きを予測できれば、ものづくりに役立つでしょう。エンジンのような複雑な構造をもつ物体の熱の伝わり方は、現場での経験や実験の結果に頼っている部分が多いのですが、ランダムウォークの研究が進展すれば、計算によるより理論的な予測に基づいたものづくりの可能性が広がります。
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山形大学 理学部 理学科 数学コースカリキュラム 准教授 石渡 聡 先生
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