限りなく小さな粒子に秘められた力
ニュートリノって何?
物質を構成する最も基本的な単位を素粒子と言います。ニュートリノは素粒子の一種で、νで表し、英語のニュートラル(中性)とイタリア語のイーノ(小さい)という語が表すように、電荷を持たない、非常に軽くて小さな粒子です。ニュートリノは、太陽や地球の内部、原子炉や人間の体内などから発生します。宇宙では光に次いで多く飛び交っている素粒子で、物質を構成する粒子の中では最も多く存在します。ニュートリノには、二つの大きな特徴があります。一つは非常に軽いこと、もう一つは透過性が高く、何でもすり抜けてしまうことです。太陽から飛んできたニュートリノは、1平方cmにつき、1秒間に660億個も、私たちの身体や身の回りの物をすり抜けています。
どうやって観測するの?
何でもすり抜け、滅多に反応しないニュートリノを観測するには、ノイズのない清浄な空間と装置が必要です。地表には宇宙線(宇宙からの放射線)が多く降り注いでいるので、地下に潜る必要があります。地下は宇宙線がほとんど遮断され、ニュートリノだけがすり抜けてきます。岐阜県飛騨市神岡町の地下実験室にある「カムランド」は、液体シンチレータという特別な油を使用した世界一清浄なニュートリノ検出器で、ニュートリノ反応に対して発光します。水を使用した検出器よりはるかに明るい光を出すため、低いエネルギーの現象を高精度で観測することができます。特に、反電子ニュートリノと呼ばれる、原子炉や地球内部から発生するニュートリノの検出に優れています。
正確な情報伝達能力!
ニュートリノは何からも影響も受けずに飛来するため、発生した場所や、光学的に見ることができない場所の情報をそのまま伝えてくれます。ニュートリノの観測によって既に、地球内部のさまざまなことがわかっています。また、原子力発電所の横で観測すると、原子炉が健全に燃焼しているかどうかがわかります。IAEA(国際原子力機関)では、核開発に対する抑止効果としてニュートリノを利用しようという発想も出てきています。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 理学部 物理学科 教授 井上 邦雄 先生
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