農業にも有効な、全体を見通す「経営戦略」
経営戦略から生まれる新しいマーケット
農業は長い間、作ることに徹していましたが、最近は加工品にも力を入れています。工業製品と同じように工程管理をして生産性を上げることは重要です。お米をテーマに考えてみましょう。かつては30kgの大袋で販売していましたが、どんどん小分けされ、今では1kgのものもあります。きちんとデザインした2、3合のパッケージに入れて観光施設や道の駅に置いてみたところ、産地米のおしゃれなお土産として売れ行きがよく、新しい市場が開拓できた事例もあります。自分で食べるか贈答用という需要だけでは売れ残ってしまうのです。
山間地の農業で経営戦略を立てるには
マーケティングや栽培管理、収穫、輸送、販売といった部門を、個別ではなく同じ土俵に並べて分析し経営に役立てるのが、農業における経営戦略です。平野の少ない日本で圧倒的に多いのは山間地域の農業です。地形的に農地を集めて大規模にすることが難しいので、米や麦、大豆などの穀類、あるいは野菜や果樹を中心にした、高付加価値の農業を営むのが理想です。販売価格が高ければ、生産者のもとに資本が残ります。生産者が農産物の加工までを行う「六次加工」に関しても、原材料の何倍かの価格で高く売れれば、加工のために地域の人を雇うこともできます。山間地の農業が維持できれば、日本の食や日本の風景までもが守られていくのです。
個人の能力だけに頼らない仕組みとして
この仕組みのなかでは、単に「良いものをつくれば売れる」「あの人がすごいから売れている」という考え方から脱していきます。種や苗を仕入れて栽培し、収穫して荷造り・輸送し、売るという一連の流れを、農業者が生活できる仕組みとして構築することが重要です。最先端のIoTをいきなり導入しても、それを使いこなして利益を出すのは意外に難しいものです。農業法人を含めた農業者が確実にできることをして仕組みを改善し、商品のレベルを高めていくことが、経営的な成功への一番の近道なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 教授 山本 公平 先生
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