講義No.09285 薬学 生物学

ヒトの遺伝子がわかれば、投薬方法が変わり難病治療が可能に

ヒトの遺伝子がわかれば、投薬方法が変わり難病治療が可能に

人間には約3万個の遺伝子がある

2004年にヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)の塩基配列の解読が完了し、ヒトには、約3万個の遺伝子があることがわかりました。ただ、それぞれの遺伝子がどんな働きをするのかに関しては、解明されているものもあれば、一部だけがわかっているもの、ほとんどわかっていないものもあります。
膨大なデータが必要であることや、感情に関わる部分などは動物での実験が難しいことなどから、すべてを解析するにはまだ時間がかかります。

遺伝子情報がわかれば、投薬方法が変わる

遺伝子のことがわかれば、医療分野で大きな変化が期待できます。例えば、薬を代謝する機能が弱い人に、正常な人と同じ量の薬を処方すると、副作用を起こす可能性が高まります。しかし遺伝子情報により、そのことが事前にわかれば、投与する量を減らしたり、薬を変更したりして、体への負担を軽減できます。現在、オーダーメイド医療(テーラーメイド医療)といって、患者さん一人ひとりに応じた医療の提供をめざす動きがありますが、遺伝子情報が解明されれば、大きな一歩になりそうです。
近い未来の保険証は、遺伝子情報が書き込まれたICチップ付きのものになると言われています。薬剤師はこうした情報やそれに基づくAIの判断を参考に調剤することになるでしょう。

難病の原因を解明し、治療につなげる

また、難病と言われている病気の解明が進むことも期待されます。難病の患者さんのゲノムと健常者のゲノムを比較することによって、原因遺伝子を特定することができます。事実、筋ジストロフィーなど、1つの遺伝子が壊れているために起こる病気は、原因の遺伝子がほとんど解明されました。複数の遺伝子が影響しているとされる統合失調症やナルコレプシー(過眠症のひとつ)なども、わかりつつあります。関与する遺伝子が多い疾患ほど、必要なデータが増えて解明が大変ですが、もし成功すれば、治療や、進行を遅らせたりすることにつながるのです。

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先生情報 / 大学情報

横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 分子生物学研究室 教授 川嶋 剛 先生

横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 分子生物学研究室 教授 川嶋 剛 先生

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薬学、分子生物学

メッセージ

あなたが大学を卒業して社会に出る頃には、AI(人工知能)が発達し、一方で、高齢化がさらに進んでいることでしょう。薬学や薬剤師の仕事も、こうした時代に合わせて大きく変化していくことが予想されます。ただ、薬が私たちに欠かせないものであることに変わりはなく、薬学を学ぶことで、社会に貢献できる知識や技術を身につけることができます。
あなたも大学で薬学を学び、社会に貢献しませんか。やる気がある人は、ぜひ横浜薬科大学に来てください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

横浜薬科大学に関心を持ったあなたは

全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。