わかりやすくて飲みやすい薬のパッケージデザイン
処方薬パッケージの改善は新しい分野
薬のパッケージについて、薬剤師のもとに患者さんから「種類の見分けがつきにくい」「開けにくい」といった声が届くことがあります。こうした処方薬のパッケージデザインは医薬品の規格基準を定めた「日本薬局方」でも明確な基準はありません。患者さんの声も製薬の現場にはなかなか届きづらく、コスト面の問題もあり改善に至りにくい背景がありました。しかし、近年はジェネリック医薬品の普及もあり、患者さんの声をパッケージの改善に反映させる動きが現れ始めました。
ユーザーにとっての使いやすさを突き詰める
使いやすいパッケージを考えるには、実際にその薬を使う患者さんに試してもらうのが一番です。例えば、指先にうまく力が入れられないリウマチの患者さんに1人で取り出して飲むことができるかを試してもらい、意見を聞きながらより使いやすいパッケージのあり方を調査します。また、小さい子どもの誤飲を防ぐ薬品パッケージを作るために、5歳までの子どもに実際に開けられるかを試してもらい、ヨーロッパの安全性基準に合わせたパッケージも開発されました。こういった試行錯誤の末、さまざまなパッケージの改善が行われ、患者さんからも「使いやすくなった」と好評を得るようになりました。
薬剤パッケージのユニバーサルデザイン化
さらに現在は、視覚障害者が自分1人で薬を選別できるようなパッケージの開発が進められています。これは薬のパッケージ包装のアルミ部分に、目には見えない特殊な赤外線インクでバーコードを印刷し、それを専用の機械で読み取ることで薬の名前や説明などを音声で聞くことができる仕組みです。こうした工夫もユニバーサルデザインの一種で、こういった実績が集まることで薬のパッケージに関する法律や基準にも少しずつ変化がもたらされるでしょう。誰にとっても使いやすいパッケージの開発は、製薬そのものと同じくらい重要な分野だと言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
横浜薬科大学 薬学部 臨床薬学科 教授 村田 実希郎 先生
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