講義No.12257 薬学

化学物質との正しいお付き合いを

化学物質との正しいお付き合いを

痛みを伝える受容体「TRPイオンチャネル」

トウガラシを食べると、辛さや痛みを感じるのはなぜでしょうか。これはトウガラシに含まれるカプサイシンによって、ヒトの細胞膜にある受容体「TRP(トリップ)イオンチャネル」が活性化し、「辛い」「痛い」という信号が脳に送られ刺激を感じるという仕組みです。痛みを伝える働きを持つ「イオンチャネル型」の受容体の発見は1990年代後半と新しく、医療やヘルスケア分野を中心に研究が進んでいます。イオンチャネルの動きを阻害する化学物質を特定することで、その化学物質を添加した鎮痛剤の創薬などが期待されます。

化学物質による健康被害

化学物質は、私たちの生活に身近な製品にも含まれています。昔は工場や自動車が発する排気に含まれる化学物質による大気汚染で、健康被害が起きました。現代は大気汚染よりも、室内の化学物質の方が健康被害につながっているとも言われます。1990年代、住宅の建材に防腐剤や塗料として添加されたホルムアルデヒドなどの化学物質による健康被害が、「シックハウス症候群」とされ社会問題になりました。厚生労働省が指針値を定めたことにより健康被害は減りましたが、その分建材の防腐効果が低くなり、室内がカビやすくなったという報告も見られます。

化学物質の効果と怖さを正しく理解

化学物質の添加については、国による厳しい基準が定められていますが、知らずに過剰摂取してしまうこともあります。例えばワンプッシュ式殺虫剤や、たんすの中に置く防虫剤に用いられるピレスロイドは安全性の高い化学物質ですが、大量に浴びたり吸入したりすると健康被害が起こる可能性もあります。特に寝室など、長時間閉め切られる空間で使う際には注意が必要です。ピレスロイドによる深刻な健康被害はまだ報告がありませんが、健康被害が起きる前に化学物質を健康に害なく使える条件を研究で明らかにし、社会に伝える必要があるのです。

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横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 教授 香川 聡子 先生

横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 教授 香川 聡子 先生

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薬学

先生が目指すSDGs

メッセージ

薬学は、男女を問わず長く仕事が続けられる分野です。医療機関や一般企業、公衆衛生に関わる省庁など、活躍の場も幅広いです。薬学というとマウスを使った動物実験のイメージがあるかもしれませんが、現在は例えば化粧品会社でも動物実験を禁じる企業がほとんどで、データサイエンスを生かした研究も活発です。また、医療系の科目は高校で習うことがほぼないので、入学時のスタートラインは皆同じです。勉強をする習慣とやる気さえあれば、いろいろな道に進めるのです。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

横浜薬科大学に関心を持ったあなたは

全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。