バイオの力で健康を調べるウエアラブルなバイオセンサ

バイオの力で健康を調べるウエアラブルなバイオセンサ

バイオ材料を使って汗の成分を測る

超高齢社会の今、健康長寿を実現するためのパーソナルヘルスケアが求められています。その一つとして、有機FET(電界効果トランジスタ)の特徴を生かしたバイオセンサの開発が進められています。バイオセンサとは、酵素などのバイオ材料を用いて生体成分を測るものです。自分の健康を知るために、汗に含まれる生体成分を手軽に測ることができる、軽くてウエアラブルなバイオセンサが研究されています。

印刷可能でペラペラのセンサ

例えば糖尿病の患者さんは、血糖値を測るのに、現状では自分で少量の血液を採らなければなりません。一方で、汗にも血糖が若干含まれている可能性が示されています。このセンサは、グルコースにしか反応しない酵素を検出部に固定して、汗の成分を測るものです。有機FETは印刷することが可能で、軟らかく感度が高いという特徴があります。ラップのようにペラペラのセンサを作り、手首などに貼ったり巻いたりして、そこで汗の成分の中からグルコースに関する情報のみを計測してスマホに飛ばせば、確認できます。印刷できるので大量に安価に製造でき、軽いので気軽に身につけられ、血液を採る手間や痛みからは解放されるのです。

さまざまな体内センサとしての可能性

大きな課題の一つが、センサに使っている酵素は生き物なので、体内と同じ環境にしないと、働きが悪くなるということです。また、汗の計測方法も課題です。汗は混ざりものなので、その成分をいつでも正確に細かく計測するのは難しいのです。
それでも、このバイオセンサは大きな可能性を秘めています。汗は、血糖以外にも、ストレスを感じているときの分泌物のほか、感染症によるウイルスなど、体内の状態を教えてくれるさまざまな成分が含まれると言われています。つまり、ストレスセンサや熱中症予防のセンサ、病気に感染しているかを測るセンサなどにも応用できるのです。

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山形大学 工学部 高分子・有機材料工学科 准教授 長峯 邦明 先生

山形大学 工学部 高分子・有機材料工学科 准教授 長峯 邦明 先生

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有機材料システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

受験を控えて時間が限られているかもしれませんが、いろいろなことに興味を向けてみてください。時には受け身になることが最大の攻めになることもありますから、多くの人の話を聞き、自分の興味にしたがって進んでいけば、必ず将来につながっていきます。
私は、高校生の時に特になりたい職業や学びたい分野があったわけではなく、入学した学科も第一希望ではありませんでしたが、社会のためにもなる今の研究は楽しく、好きなことを仕事にできたのは運が良かったと思っています。

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山形大学は、東日本有数の総合大学であり、4つのキャンパスはネットワークで融合されています。社会のリーダーにふさわしい基本能力と幅広い教養を身につけるため、教養教育に力を入れています。大学運営の基本方針として、一つは、何よりも学生を大切にして、学生が主役となる大学創りをするということ、そしてもう一つは、教育、特に教養教育を充実させるという2点を掲げています。