なぜ汗をかくの? そのメカニズムと熱中症の研究
汗をかくこと、水分を保持すること
普段から運動をしている人は、しっかりと汗をかくことができます。このような人の汗腺の能力は高くなっています。暑いところで運動をすることで大量に汗をかき、それによって汗腺が鍛えられていくのです。マラソン選手などは日頃からよく汗を流しているので、特に汗腺の能力が高いことが知られています。汗をかくことによって体の熱を放出できるので、日頃から汗をかいて汗腺を鍛えることは夏の熱中症予防にとても大切です。
一方で汗をあまりにかきすぎると脱水状態になる危険があります。そのため夏の運動時には水分補給が欠かせません。しかし、飲んだ水分の一部は尿として排出されてしまいます。摂取した水分をどれだけ体内に残すことができるかということも、熱中症予防やオリンピックのような夏のスポーツには重要な研究課題です。
汗をかける人のメカニズムに迫る
汗をかくことに関する実験には、室温や湿度を自由に調節できる実験室を使います(人工気象室と呼びます)。冬でも室温35℃という暑い環境や、サウナのような高温多湿の環境をつくることもできます。そこで、対象者に運動をしてもらい、汗の量や成分、体温や血圧などを測定していきます。薬理的な手法も駆使して、汗をたくさんかけるのはどうしてか、そのメカニズムを探ります。
学校で起こりやすい熱中症
夏場に起こる熱中症は、体温を調節する生理機能が働かなくなることで起こります。特に、体育の授業や部活など、学校現場で起こる熱中症は解決すべき問題の一つです。子どもは体の生理機能が発達段階にあるため、それを踏まえた配慮が必要です。最近では、小中学校の数百人の生徒の体内の水分状態を尿から調べるなど、学校現場での調査も始まっています。また、暑い環境で運動を行い、その際に体を守る機能がどのように働くのかを検証する研究も行われています。これらの調査や研究を進めることによって、より画期的な熱中症対策を開発することが期待されます。
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新潟大学 教育学部 保健体育・スポーツ科学講座 准教授 天野 達郎 先生
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