生命の「基本設計図」DNAとは?

生命の「基本設計図」DNAとは?

DNAは生命の「基本設計図」

DNAとは一言で言うなら、生命の基本的な「設計図」です。人間の体は約60兆個の細胞でできていますが、この一つひとつにDNAがあり、細胞はこのDNAがもっている情報にもとづいて、それぞれの場所にふさわしい形と働きをしているのです。

DNAの「セントラルドグマ(中心命題)」とは

では、DNAはどんな仕組みなのでしょうか。DNAとはデオキシリボ核酸の略で、ひとつながりのヒモ状の高分子です。このヒモは4つの塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)でできていて、この配列がDNAの遺伝情報なのです。
DNAの塩基配列は、RNA(リボ核酸)に伝えられ、RNAによってたんぱく質が合成されます。たんぱく質とは20種類のアミノ酸がつながったもので、DNAの塩基配列とたんぱく質のアミノ酸の配列は対応しています。生命現象を主に担っているのはたんぱく質ですから、そのもととなるDNAの塩基配列が「生命の基本設計図」と言われるのです。
DNAからRNAに伝わり、たんぱく質を作るという原理を「セントラルドグマ(中心命題)」と呼んでいます。

解析進む「ヒトゲノム」

人間一人を形成し、生命活動を維持するのに必要なすべてのDNAの配列情報が「ヒトゲノム」です。塩基が30億個もつながっているもので、長さは約2mあります。これが一つひとつの細胞すべてに格納されているのですから、驚きです。
「ヒトゲノム」の解読は2003年に基本的に完了しました。個人差はほとんどなく、99.9%は同一であることがわかっています。残り0.1%が違っているために、人間は一人ひとり異なっているのですが、その解析の技術も進んでいて、近い将来には、たった数分間で個人の「ヒトゲノム」を解析できるようになると考えられています。それが実現すれば、例えば薬の効き方の個人差なども解明でき、オーダーメイドの治療法に利用できるようになるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 教授 太田 邦史 先生

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 教授 太田 邦史 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生命科学、ゲノム科学、医学

メッセージ

生物学や生命科学を研究すると、生き物・生命が、いかに奇跡的なものであるか、生きていること自体がいかに不思議なことであるかが、ひしひしと感じられます。私たち一人ひとりがそうした生き物の一員であること、“今、ここに生きている”ことのかけがえのなさをしっかりと知ることで、命の大切さを感じてほしいのです。高校では生物学を学ぶ機会が少ないようですが、英語や国語に匹敵するくらい重要なジャンルだと思います。高校生のあなたには、ぜひとも積極的に生物学を勉強してほしいと思っています。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。