人の心や行動を考え、建築をデザインする
画家が計画全体に関与した美術館
国内外で人気の高い画家の藤田嗣治(つぐはる)(レオナール・フジタ)は戦前、「秋田の行事」という巨大壁画を制作中に、支援者の平野政吉とともに「秋田の行事」を展示するための美術館を計画していました。戦争が始まって実現することはありませんでしたが、近年発見された図面に不足している情報を補いながら制作された「まぼろしの美術館」のCGからは、「秋田の行事」をどのように鑑賞してほしいと考えていたのか、みせ方に対する画家の意図を探ることができます。
「人-美術作品-建築」の関係を考えた空間
建築は、建築家自身の作品追求を目的としていたものも数多くあります。しかし今は、心地良さや空間と人との対話を重視した建築計画が求められるようになってきています。こうした考え方が意識されるようになったのは、建築計画学の主要な分野が確立され、さらに環境心理学という「人と建築環境の関係」を考える学問が意識されるようになった1960年代半ばあたりからです。以降、建築デザインに、使う人の意図や心理が大きく関わるようになったのです。「まぼろしの美術館」は、画家が積極的に関与した美術館の、国内初の、国内外でも数少ない事例で、画家の意図(来場者に作品とどう向き合ってほしいか)が反映された空間となっています。完成していれば、「人-美術作品-建築」の三者の関係を意識した、現代のミュージアム計画にも通じる先例になっていたかもしれません。
建築を心理学の視点からも考える
美術館における「人-作品-建築」の関係に限らず、人が使う建築は、人の心や行動を考えてつくらなければなりません。病院の待合室を使いやすくするためにイスの配置を工夫し、人が集まって話しやすい室内になるように意識して空間を設計するなど、人と建築の関係を考える環境心理学の研究も進んでいます。しかしそのための基礎的な理論はまだ十分とは言えず、これからの発展が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
秋田県立大学 システム科学技術学部 建築環境システム学科 准教授 込山 敦司 先生
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