地衣類や植物のここがすごい! 有用物質を培養で大量生産へ

有用性が期待される二次代謝物
漢方薬などの原料となる薬用植物には有用な物質が含まれています。特に植物が外敵を追い払うときや、傷をつけられたときに分泌する二次代謝物の中には、高い薬理活性を持つものが多くあります。具体的には、抗酸化、抗菌、抗がん、抗炎症などさまざまな薬理活性がありますが、どのような物質が有用な薬理活性を持つのか現在も研究が盛んに進められています。
有用物質を培養で生産する!
ただ、その代謝物を抽出するのに植物を一から栽培していたのでは、成長するまでに数年以上の時間がかかってしまいます。そこで植物を組織培養し、天候などに影響されることなく短時間で有用物質を大量生産しようという研究が進められています。
また、培養すると元の生物が産生する主要物質のみならず、自然界では産生が微量な物質が産生されるケースもあります。また、一部の化学構造が変わった新規物質が発見されるケースもあり、その化学構造や有用性が分析されています。
現在は数百mlのスケールでの培養において、より効率のよい大量生産システムの確立をめざして、植物や有用物質の種類に応じた培養の温度や培地に入れる栄養、液体培地をかき混ぜる器具の形状など、さまざまな条件について検証が進められています。
地衣類の二次代謝物にも注目
岩や木の幹の表面に生息する地衣類は、菌類に藻類やほかの菌類が共生した複合的な生物です。海外では紀元前から民間薬や染料などに使われ、日本でも日本画の中に地衣類が描かれています。地衣類もまた独特の化学構造を有する「地衣成分」を産生しますが、その中にも抗酸化物質など有用な物質が多く報告されています。このような代謝物を産出するため、地衣類に共生する藻類や菌類を分離・培養し、それぞれの菌類や藻類がどのような有用物質を作っているのかが調べられています。すでにいくつかの有用な物質が発見されており、こちらも同様に、培養で大量生産するための研究が進められています。
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秋田県立大学生物資源科学部 生物生産科学科 助教川上 寛子 先生
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