植物から新しい薬のヒントを探し出す、まさに「宝探し」の研究とは
薬草や薬木には科学的な裏付けがあった
日本はもちろん世界各地に、昔から知られている薬草や薬木があります。現代のような医薬品がなかった時代から、人々の経験に基づいて伝えられてきたこれらの知識は人類の大切な財産です。これらの薬用植物には多種多様な成分が含まれており、この中には未知の薬効を持つ成分がまだ眠っているかもしれません。あらゆる植物の中から、まだ知られていない有用な成分を探し出し、新しい薬の種を探し出す学問は「生薬学」のひとつです。
地道な作業の繰り返しで「薬の種」を探す
植物から薬の種を探し出す研究は、まず「何に効く成分を探すか」という目標を決め、いろいろな植物エキス中の成分をさまざまな有機溶媒で取り出していくのですが、対象となる植物は数百種類になることもあります。
まず雑多な成分が混じっているエキスを大まかな成分ごとに分け、それぞれの活性を比較した上で薬効が大きいグループを選び出し、そこから最も効果が大きい成分だけを取り出していくという地道で大変な作業です。しかし、見つけた成分が種となって特効薬の開発に結び付くかもしれないので、やり甲斐のある研究でもあります。
他国の医療や経済への貢献も
予想外の植物から新しい薬の種が見つかるケースもあります。コブシという植物のつぼみは、鼻づまりに用いられる漢方薬などに配合されていますが、このつぼみにメラニンの合成を活性化する成分を見つけだし、皮膚が部分的に白くなる「白斑」の治療薬の種になるのではないかと現在研究が進んでいます。また、アフリカには原虫によって引き起こされる「アフリカ睡眠病」という熱帯病がありますが、ガーナ原産のアカネ科の植物の葉から原因となる原虫を殺傷する成分が発見されました。この成分が薬になれば、ガーナの医療や経済に貢献できるかもしれません。
薬学は研究室や医療機関が主な研究フィールドですが、生薬学の研究は植物の自生地まで出かけ、現地の研究者とのコミュニケーションを広げる楽しさもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
長崎国際大学 薬学部 薬学科 教授 宇都 拓洋 先生
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