お腹の中にいたときの栄養が赤ちゃんの一生を左右するかも?
誤った美意識
「単品ダイエット情報」や「3日で痩せられる方法」など、メディアでダイエット関連のことを目にしない日はありません。「細い=美しい」の誤った美意識が潜在的に定着し、痩せる必要がない体でもダイエットしてしまいます。その状態を続けていると、女性の場合は子どもに生活習慣病(心臓病など)の素因を作ってしまうかもしれません。栄養が十分でない女性が妊娠したとき、胎児は低栄養の中でも生き延びられるよう、節約型の体になります。ところが出生後に十分な栄養を与えられるようになると、過剰な栄養に適応できなくなり、病気が発症しやすくなるのです。これが「成人病(生活習慣病)胎児期発症説」です。
貧血や栄養不足は胎児の健康を危うくする
胎児期から新生児期の遺伝子変化の多くは一生変わらないと言われています。ですから、妊娠前後の母体や胎児への栄養摂取をきちんとすることが大事なのです。そのためには、思春期から栄養について考える必要があります。現代の日本女性は、20代の約3.5人に1人が痩せで、約5.5人に1人が貧血状態です。妊娠した場合は胎盤や胎児のために、体の鉄分要求量が増加し、さらに貧血が加速します。ダイエットによってすでに鉄分不足や低栄養の体であれば、妊婦は胎児の要求に応えられないのです。
赤ちゃんのためにすべきこと
痩せ過ぎの女性が増加するのに比例して、低体重児(2.5キロ未満)も増加してきています。これは食料事情が悪かった昭和30年代よりも多い数字です。低体重児で生まれると、将来、心臓疾患や高血圧などの生活習慣病を発症する可能性が高くなります。シンプルですが、偏りのない栄養を摂取することが赤ちゃんの健康のためにも一番です。極端な痩せ願望と誤った美意識、妊娠前からの食生活の重要性、それらをきちんと理解することが必要でしょう。食べ物や栄養に関してメディアに流れていますが、間違った情報も多く見られます。正しい選択をすることが大事なのです。
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先生情報 / 大学情報
長崎国際大学 健康管理学部 健康栄養学科 教授 熊井 まどか 先生
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