光合成研究から見えてきた環境・食糧問題解決への糸口
植物の効率的育成のために
光合成とは、葉緑体を持つ植物が光のエネルギーを利用して、二酸化炭素と水から、デンプンなどの栄養や酸素を作ることを指します。植物の成長に欠かせない光合成の効率化、改良によって、食物の増産や、植物が強すぎる日光、高温などの異常気象の影響を受けにくくなるといったことが期待されています。このように、環境問題・食糧問題の解決の糸口となり得る光合成の研究が進められています。
ケイ酸、遺伝子組換え技術による光合成の効率化
ケイ素・酸素・水の化合物である「ケイ酸」をイネに与えると、葉の表面がコーティングされ、水分ロスが低下すること、葉が立ち光の受容性が向上すること、根の活力が向上することなどによって、光合成の促進が期待できます。また茎が丈夫になり、風や雨などでイネが倒れる数を減らせます。特に栄養の不足している田んぼ、あるいは高温による収量減少が予想される場合などに、ケイ酸の使用が光合成の低下を防ぎ、収量や品質の維持・収量増加に有効であると考えられます。
また、強すぎる光エネルギーは植物にとって大きなストレスになりますが、このストレスを効率よく消去する遺伝子組換え植物が開発されています。このような光合成の改良により、強光ストレスだけでなく、高温や干ばつへの耐性向上の可能性が見えてきています。
生産者の立場になった検証
ただし、特に遺伝子組換え植物については、安全性や有効性の立証をはじめとする、さまざまな課題があります。またケイ酸についても、コストや、使用が推奨される明確な基準が確立されていないといった問題から、十分に普及しているとは言い難い状況にあります。
今後、生産者の方々の役に立ち、さらには環境問題・食糧問題の解決に貢献するためには、環境制御がなされた屋内での研究に加えて、フィールドでの研究も重要になっていきます。近年では、サーモカメラ付きのドローンを飛ばし、イネの葉の温度を測定する実験なども行われています。
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先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 准教授 田副 雄士 先生
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