発達障がいの子どもへの「心理的アプローチ」
「発達障がい」とは
「発達障がい」では、遺伝や幼児期の疾患などが原因で、脳の発達が通常とは少し異なり、行動面やコミュニケーション面で障がいが発生する行動特徴が問題としてとらえられます。その中にも、他人の気持ちが判断できないため、周囲とのコミュニケーションを築けない「アスペルガー症候群」、ひとつの事柄に集中できず、落ち着きなく動き回る「注意欠如・多動性障がい(ADHD)」など複数の障がい形態がありますが、多くの場合は適切な援助を行うことで、社会生活に適応できるようになります。発達障がいの子どもに対する正しい理解と援助法の研究は、「臨床心理学」の中でも重要なテーマのひとつです。
擬似的体験を通じて「他者の感情」に気づく
障がい行動の内容は、子どもによって異なります。そのため臨床心理学では、それぞれの子どもに適した援助の方法を判断できるよう、いろいろな心理的アプローチの手法を学びます。
障がいのある子どもと援助者、または子ども同士で、役割を交替しながら、日常的なトラブルの場面を設定し、子どもたちの役割を決めて演じてもらう「心理劇のロールプレイング」は、学問としてだけでなく実際の援助場面や福祉現場でも、盛んに行われています。自分の立場が変わったり、相手の感情がわかりやすい状況を擬似的に体験することで、相手の感情を考える「きっかけ」を与えるわけです。
ますます重要になる心理的アプローチのスキル
近年、幼少期からゲーム機やタブレットなどを与えられっぱなしで育ち、他者とのコミュニケーションが苦手という子どもが急増しています。これは発達障がいとは異なり、幼児期の育児環境が原因となった「不適応行動」のひとつなのですが、何らかの援助がなければ社会生活になじみにくいという点では、発達障がいの子どもたちと同様と言えるでしょう。こうした子どもが年々増加する中、社会福祉士や小・中学校教諭をめざす人たちにとって、臨床心理学に基づく心理的アプローチのスキルは、ますます重要になるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
長崎国際大学 人間社会学部 社会福祉学科 教授 柳 智盛 先生
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