遺伝子は環境の変化に影響を受けるのか
マウスの養育行動について実験する
行動を科学的に検証する上で、遺伝子が変異したマウスを使った実験が行われます。
マウスを、遺伝子に突然変異がないAグループ、遺伝子に突然変異が生じたBグループに分け、それぞれの出産後の子育ての様子を観察することにより、遺伝子と「養育行動」の関係性が見えてきます。Aグループのマウスは、産まれた子どもに対して、毛づくろいをしたり立派な巣を作ったりしますが、遺伝子が変異しているBグループのマウスは、子どもの面倒を見なかったり(育児放棄)、中には子どもに対して攻撃行動をしてしまうものも現れます。この結果から、突然変異が入っている遺伝子が養育行動に関わっていることがわかります。
マウスの行動が環境によって変化
さらに、この変異した遺伝子を持つマウス(Bグループ)から生まれた仔を、条件を変えて育てます。具体的には、そのままの環境で育てるグループと、好環境に移動するグループに分け、成長後の行動の変化を観察します。すると、好環境に置かれた仔は、子育てに関わる遺伝子に突然変異が入っていても、自身が子育てする立場になった時、養育行動が改善するというデータも出ています。
環境次第で変わることができる
動物の知能レベルや生存する環境は複雑で多様であるため、マウスの実験でわかったことがすべて、ほかの動物へ当てはめることはできません。しかし、遺伝子に突然変異を持っているマウスでも、十分な養育を受けると行動が改善することは実証されています。
なぜこういうことが起きるかというと、遺伝子の構造は変わらないものの、生まれた後に受ける刺激により、遺伝子から作られるタンパク質の量が変化するからです。これを「エピジェネティクス」といい、研究が進められているところです。動物の行動は、遺伝子のみで決まるものではなく、環境の影響も大いに受けているということです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 農学部 動物科学科 講師 今井 早希 先生
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