子どもの治療法をみんなで決めたい
治療法は誰が決める?
子どもに多い病気である食物アレルギーの治療法は、アレルギーの原因となる食物を除去する方法に加えて、近年では、原因食品をあえて摂取する治療法である経口免疫療法などが行われています。この治療は、原因食品のアレルギー症状が誘発されにくくなる可能性があると言われていますが、情報は少なく、また治療中にアレルギー症状が誘発される可能性があるなどの課題もあります。したがって、治療法の決定について迷われる親は多く、当事者である子どもを交えて話し合うことも難しい状況です。
パンフレットの作成
そこで、親が治療法に関する情報を得て、子どもも含めた関係者みんなで話し合って治療法を決定できるように、食物アレルギーの治療法の選択をサポートするパンフレットが作成されました。これは、治療法や副作用について、わかりやすい説明とともに、親が子どもの気持ちを尊重する重要性も説明されています。作成にあたっては、患児家族に調査を行い、読みやすくなるような改良が重ねられました。さらに、実際に治療を検討している親子に対してパンフレットの効果を測定したところ、子どもに気持ちを聞くことの重要性に気がつき、親子の対話が促進されるなどの効果があることが確認されました。今後は医療現場への導入が目標とされています。
これからは自分で決める時代
患者と関係者が協力して意思決定を行うプロセスは、「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」と呼ばれており、欧米では支援のためのツール作成の研究が進んでいます。一方、日本では、治療法は医師が決めるという意識をもつ人が多い傾向にあり、SDMの研究も進んでいないのが現状です。しかし厚生労働省は、自身が希望する医療やケアについて家族や医療チームと事前に話し合って決定する取り組みである「アドバンスケアプランニング(ACP)」を推進しており、医療に関することについても、自分自身が主体となって選択する時代になってきています。今後は日本でもSDMが進んでいくことが期待されます。
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