自分の心の中のフィルターに気づいていますか?
「読む」ことも心理学
人の行動には、必ずその人の心の動きが影響しています。心の動きはその人の思考や理解、行動に影響を及ぼします。それは「読む」という行動にも作用します。ここで言う「読む」とは、「文章を理解すること」なのですが、私の研究の対象は、比較的自由な解釈が許される小説や物語ではなく、「著者が言いたいことを論理的に書き、読む側も同じ理解になるよう配慮された説明文」を指します。そうした文章でさえも、人によって理解が異なるのです。
文章は、「その人なり」の読み取りをされる
読解力という問題を抜きにしても、同じ説明文を読んで全員が同じ理解を得ているとは限りません。なぜなら、その人なりの読み取りをされてしまうからです。よくあるのが、それまでの人生で培ってきた信念や意見が影響する場合です。それらがフィルターとなり、気づかないうちに頭の中で独自の理解を作り上げてしまうことがあるのです。また受験テクニックのような知識が影響する場合もあります。受験では読解力を高めるテクニックとして、たいてい「大事なことは文章の最後の方に書かれている」と教わりますね。でもそのために誤読が生じることもあるのです。私たちの実験で、大学生に最後と途中の段落をわざと入れ替えた文章を読んでもらい、重要な部分はどこかと尋ねました。すると、入れ替える前は、最後の段落を重要と答える人が多かったのに、入れ替えたら、本来は途中にあった段落を重要と答える人が増えました。丁寧に読めばわかるはずなのですが、ついテクニックで得た思考の枠に頼っているのです。
自分の読み取り方の特徴を知ろう
ただ、自分の思考の枠があるのは悪いことではありません。思考するうえで効率的ですし、余った力を別の大切な思考に振り向けられます。ポイントは、その人が持つ知識や信念などが、無意識のうちに文章の理解に影響するということを知っておくことだと思います。文章に本当に書いてあることなのか、それとも自分の意見や感想なのかを分けて考えることが大切なのです。
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札幌学院大学 人文学部 人間科学科 教授 舛田 弘子 先生
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