微生物は地球を救う!
食品や医薬品、エネルギーにも有効なバイオ技術
日本では昔から、味噌(みそ)やしょうゆ、日本酒や漬物などの身近な食べ物で、微生物を利用した発酵醸造の技術が伝承されてきました。このように微生物は、食品の保存性を高めたりおいしさを増したり、食生活を豊かなものにしています。それだけではなく、抗生物質や薬品、バイオマスエタノールなどの新たなエネルギーの生産など、さまざまな分野で、微生物を有効利用するバイオ技術の研究が進められています。
未利用資源を乳酸菌の力で有効活用
地球上にはさまざまな性質をもった細菌が存在します。ヨーグルトや漬物を作る乳酸菌は、「1つの糖を取り込んだ時に、その半分以上を乳酸に変換する能力をもった菌」の総称です。最近では、桃の香りを出す乳酸菌や、魚の生臭みを消す乳酸菌などが発見されています。この臭みに作用する乳酸菌は、捨てられていた魚の内臓から、全く生臭みのないうま味の濃いしょうゆを作る技術に実用化されています。このように、未利用資源から価値ある食品を作り出す発酵技術の可能性が注目されています。
おいしいものを食べて健康になるお手伝い
発酵食品は、その機能性が重視されがちですが、同時においしさの追求も重要です。微生物の研究から派生して、おいしさとは何か、その評価基準を作る研究も進められています。微生物が作る物質の中には、アミノ酸やペプチドという物質があります。この成分がうま味を持続させ、コクを感じさせることがわかってきました。多くの人がただの塩水よりもしょうゆをおいしく感じるのは、このような物質が生成されているためなのです。
薬やサプリメントではなく、和食をおいしく食べることで、お腹をきれいにできるように、漬物の中から腸内の大腸菌を攻撃して粘膜を守る乳酸菌を見つけ出す研究も進んでいます。微生物は世界を救い、そしておいしい食事で人々に楽しみを与えるという点でも、重要な役割を果たしているのです。
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先生情報 / 大学情報
宮城大学 食産業学群 フードマネジメント学類 教授 金内 誠 先生
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