海洋汚染物質を除去する微生物を探せ!
海洋汚染の原因となる有害化合物
世界で深刻な問題になっている海洋汚染の原因にはプラスチックなどのゴミのほかに、人間の活動により排出された有害な化合物があります。海洋に漂うゴミは、困難はともないますが回収する技術があります。しかし、有害な化合物で揮発性のあるものが拡散してしまうと、世界中に散らばってしまい回収の手立てはありません。汚染源となっている場所で分解する方法を考えなければなりません。
結晶を立体に可視化する
化合物の分解の方法としては化学的、物理的な手法とともに、微生物学的な手法も研究されています。例えば石油精製工場の周辺の土や水には、石油由来の有害化合物を分解する能力が高い微生物が存在している可能性があります。有力な微生物を分離したら、次にその微生物の中で働く酵素がどのように作用して有害な化合物を無害に変えていくかの過程を分析します。
タンパク質である酵素の可視化にはX線立体構造解析が一つの手法としてあります。タンパク質もある条件を満たすと結晶を作ることがあり、その結晶にX線を当てると立体が浮かび上がります。ここで、その立体に基質がついているものがあれば、それは有害な化合物を分解している途中だと考えられます。分解反応をリアルタイムで可視化することはできないため、途中の状態をいくつか取り出して、パラパラ漫画を並べ直すように反応の流れを推測していきます。さらに、分解反応を速めて効率を上げるために、タンパク質の一部を改変していきます。最終的には、分解に微生物を用いるだけでなく、酵素自体を使って直接分解することも研究されています。
有害化合物ゼロをめざして
物を製造する時に生じる処理水にも有害な化合物が含まれることがあるため、処理水を排出する前に微生物に分解処理させる方法があります。このような微生物学的手法と化学・物理的手法を組み合わせて、できる限り有害化合物をゼロに近付け、海洋環境を守る研究が進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 岡井 公彦 先生
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