音の仕組みを研究する「音韻論」の世界
音の認識の仕方を研究する「音韻論」
水を1杯、2杯、3杯と数えるとき、「杯」の音は前の数字によって「ぱい」「はい」「ばい」と変わります。また、お腹の「はら」は、横腹、空きっ腹のように「ばら」「ぱら」になります。もとの音が状況によって異なる発音になるのはなぜなのでしょうか。
人間が話す言葉の仕組みを研究する言語学の中で、こうした問いについて考えるのが「音韻論」です。音が変化する過程から、世界中の言語に共通するプロセスを見つけたり、それぞれの音を構成するエレメント(要素)を探し出したり、さまざまなアプローチで発音と認識の不思議な関係性を解き明かしていきます。
文法はそっくり、音の体系は大きく違う韓国語
音韻論の観点から、日本語と韓国語を比較すると、興味深いことがわかります。例えば、韓国語で「バナナ」というと日本人には「パナナ」に聞こえます。韓国人は、日本語の[ぱ]、[ば]のように声帯の震えで音を区別しないからです。反対に韓国語の「足(パル)」と「腕(パル)」では、息が弱い[ぱ]と強い[ぱ]の違いがありますが、日本人には同じ音に聞こえます。日本人は、息の強さで音を区別しないからです。文法的には非常に似通っていながら、息の出し方や声帯の震わせ方など、音を区別するベースは両言語で大きく異なるのです。
言葉の奥深さに触れる音韻論の可能性
このように、頭の中でどのように音が認識され発音に結びついているかを研究するのが音韻論です。音をどう認識するか、音がどのような構造になっているかという抽象的な領域を扱うだけに哲学的な要素も持ち合わせています。しかし、音韻論を外国語の発音教育に応用すれば、日本語にはない音のメカニズムを理解することで習得がやさしくなり、同じ文字が状況によって異なる音になる現象を、個別のルールとして暗記するのではなく音の本質から理解できるようになります。
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先生情報 / 大学情報
桃山学院大学 国際教養学部 英語・国際文化学科 准教授 新保 朝子 先生
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