日本列島に最初に渡来した現生人類とは?
すべての現生人類はアフリカから
現生人類とは我々と同じ人類、ホモ・サピエンス・サピエンスのことです。かつて現生人類は、地球上の複数の地域で進化したのではないかとも考えられましたが、現在ではこの議論にほぼ決着がつき、約20万年前にアフリカ大陸で出現した現生人類が、何万年もかけて地球上に拡散したことがわかりました。では、アフリカで出現した現生人類は、日本列島に、いつ、どのようにやってきたのでしょうか。
3万8000年前に日本列島に上陸
現生人類が、アフリカからユーラシア大陸に進出したのは、約5万年前、後期旧石器時代のことです。その後、インドからオーストラリアへと向かう南のルートと、ヨーロッパやシベリアなどの北のルートを通って拡散し、日本列島に到達しました。日本列島への拡散ルートは、琉球列島経由、朝鮮半島経由、サハリン経由がありますが、これらのルートが列島内で合流したのかもしれませんし、現在の中国あたりでまず合流し、日本列島にやってきたのかもしれません。実は、その点はよくわかっていません。
いずれにしても、日本列島にある最も古い遺跡は、3万8000年前に出現しています。また、3万8000年前に位置づけられる遺跡が、東北から琉球半島までの広い範囲に分布していますから、この時期に現生人類の日本列島への植民が果たされたのは確実といえます。
遺跡の年代の特定を厳密に行う
こうした研究のためには、遺跡の厳密な年代特定が必要です。遺跡の年代は、たき火跡の炭を用いた放射性炭素年代測定を行うことで明らかにできます。しかし、遺跡は当時のままの姿で残っているわけではなく、数万年もの長い間に、気候や土地の変化、動物の行動などの影響を受けて乱されています。遺跡が乱された原因を明らかにすることによって、遺跡の年代を数千年の誤差から数百年の誤差にまで絞り込んでいくのです。このように考古学、地質学、古環境学などの総合的な研究によって、遺跡を詳しく調べることで、日本列島へ最初にやってきた現生人類の解明が進んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人文学科 歴史学・高古学教室 准教授 出穂 雅実 先生
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