講義No.09226 医療技術

薬が効かなくなった細菌を臨床検査で見極めるには?

薬が効かなくなった細菌を臨床検査で見極めるには?

細菌と薬のイタチごっこ

薬剤耐性とは、それまである薬が効いていた細菌やウイルスが、その薬に対する耐性を持つようになり、薬が効かなくなってしまう現象のことです。よく知られた例では、黄色ブドウ球菌がメチシリンという薬に対して薬剤耐性を持つようになった「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」があり、医療施設内での院内感染を引き起こす原因として警戒されています。
薬剤耐性を持つ細菌は昔から存在していましたが、近年、その種類や検出数は増加傾向にあります。医療機関で使用される薬の種類や量が大幅に増え、薬剤耐性を持つ細菌に対して別の薬を投与し、その薬にも耐性を持つ菌が生まれ、イタチごっこの状況に陥っているのです。

「サセプティブル」か「レジスタント」か

細菌が薬剤耐性を獲得するメカニズムには、外膜を変化させて薬を中に入りづらくさせる方法や、中に入ってきた薬をポンプのような仕組みで排出する方法、薬が作用する部分を変化させる方法、そして「β-ラクタマーゼ」と呼ばれる酵素を産生することで薬を不活性化させる方法があります。多くのβ-ラクタマーゼの中でも「基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)」が注目されています。
ある菌に対し、薬剤耐性菌かどうかを判定するために行う検査が「薬剤感受性試験」です。「感性(Susceptible)」か「耐性(Resistant)」を見極める検査の結果は、常に最新の情報に更新されながら、医療現場に報告されています。

臨床検査技師が果たすべき役割

薬剤耐性の有無を見極めるための検査技術は、格段に進歩しています。β-ラクタマーゼの検査方法として用いられている質量分析は、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の研究成果によって精度が大幅に向上し、より正確なデータを迅速かつ低コストで得られるようになりました。また、遺伝子検査による分析の精度もさらに向上しています。正確な検査データによって医療現場を支える臨床検査技師の役割は、今後ますます重要になっていくと考えられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科 准教授 松村 充 先生

帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科 准教授 松村 充 先生

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臨床微生物学

メッセージ

臨床検査技師は、医師がさまざまな疾患、症状、病態について正しい診断をするために必要な臨床検査データを提供する、検査のプロフェッショナルです。病気の予防や早期発見のニーズが高まるにつれ、その役割はさらに重要度を増しています。
臨床検査学科では、臨床検査データの分析力とチーム医療に必要なコミュニケーション能力の獲得を教育目標に掲げており、医療系学部・学科の垣根を越えた学生同士のディスカッションを通して、自分自身で考えて発言する力を身につけるカリキュラムを用意しています。ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。医学部・薬学部・医療技術学部を擁する板橋キャンパスの最大の特長は、医学部附属病院が隣接している点。学生は救命救急センターやERなど最先端の医療を、実習を通し体感できる場ともなっています。都心へのアクセスも良好であり、キャンパス最寄りの十条駅から池袋駅へ7分程度で行けますので、ショッピングなども気軽に楽しめます。