新しい技術開発で未来の水素社会を切り開く
究極のエネルギー源
これまで人類はエネルギー源として、まきや炭から始まり、石炭、石油などの物質を利用してきました。これらは、手に入りやすいものから手に入りにくいものへと変化すると同時に、燃やした際に生じる単位重量あたりのエネルギー量が増加していきます。背景には、それぞれの燃料に含まれる炭素と水素の割合が関係しています。水素の割合が増えるほどエネルギー量が増大するのです。つまり、水素は究極のエネルギー源といえます。
希土類で水素を検知
水素を日常的に利用するには、さまざまな準備が求められます。例えば、水素は爆発の危険性があるため、漏れを感知する水素センサが必要です。現在は、高濃度と低濃度の水素をそれぞれ検知する2種類のセンサが市販されていますが、1つの機器で両方は検知できません。そこで、どの濃度でも検知するための新しい素材が研究されています。素材には、水素を吸収すると電気抵抗が変化する性質のある希土類を用いて、センサとしての感度を高めるために、それをナノ単位の薄い膜に加工します。ただし、希土類は酸素とも反応しやすく、すぐに酸化してしまいます。そこで、セラミックスとパラジウムをナノレベルで混ぜ合わせた薄膜を希土類の表面に張り付けて、水素だけを通して電気反応を起こす素材が作り出されました。今後は、実用化に向けて素材の厚みや条件を調整するなどの研究が進められています。
今後の課題
水素社会を現実として達成させるには、これからもさまざまな研究を進める必要があります。一つには、今後需要が増えると化石燃料からの水素製造が増えるという課題があります。現在は需要がさほど多くないため、主に工場で副次的に発生する水素を回収して供給しているのです。化石燃料の利用をなるべく増やさないためにも、水素の効率的な利用法の研究が必要です。また、化石燃料を利用せずに太陽光から直接水素を生成する研究も進んでいます。水素社会の現実には、まだまだ多くの研究が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 理工学部 物理・材料理工学科(令和7年度から 理工学部 理工学科 材料科学コース所属) 准教授 山口 明 先生
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