ニワトリの消化管の構造は産卵後1日半で決定される!
動物の消化管はみんな同じ
ほとんどの動物は、口から肛門にまでつながる消化管という1本の管を持っています。そして、胃の数が違ったり、胃のない魚がいたり、などという細かい違いはあっても、消化管の大きな構造は、どの動物でもほとんど変わりません。消化管が2本とか3本あるなどという動物は存在しないのです。
動物は、受精卵が細胞分裂を起こして、いろいろな種類の細胞が生まれ、さらに成長しながら細かい器官ができていき、その体を形作ります。ニワトリの研究から、消化管の形を決定づけるのは、卵が産まれてから1日から1日半というごく初期だということがわかっています。人間の場合でも、発生のごく初期の段階に決定されると考えられます。
消化管の分化の謎を探る
ニワトリの発生過程で消化管は、3日目には管ができ、6日目までには、食道、前胃、砂嚢(さのう)、小腸、大腸など消化管の各部に分化します。つまり、まだ管すらできていない1日半の段階で、どの細胞が消化管のどの部分になる、ということがだいたい決まっているのです。
このような研究は、ニワトリなどの卵の中で成長しつつある胚を使い、各部の細胞をほかの場所に移植するなどの実験をすることで明らかになります。消化管の場合、1日目の時点で細胞を移植すれば、移植した先の場所に合わせて分化するのですが、1日半以上経ってから移植すると、本来できるべきでない場所に器官ができることになります。
医療分野への応用
こうした発生の仕組みを、さらに遺伝子や分子レベルで調べることで、さまざまなことがわかります。ある遺伝子の働きを抑えてしまうと、そこに発生するべき器官ができない、ということがわかれば、その遺伝子の機能がわかります。
例えば、胃がんは、胃の中に腸の遺伝子が発現してしまうことで発生することがあるということがわかっています。胃や腸の発生の原理がわかれば、こうしたがんの発生を早めに発見したり、発生を抑えたりすることができるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 生命科学科 准教授 福田 公子 先生
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