金融を通して見える日本の「今」
銀行店舗が無人化する時代
金融は、企業活動はもちろん、私たちの生活に深く関わります。そして金融の仕組みは日々変化しています。例えば今、銀行の店舗のあり方が大きく変わっています。ネットで買い物をするのが当たり前になったように、銀行の店舗はATM化・無人化が進んでいます。個人向けローンや少額の企業向けローンの一部についてはAIが自動審査するようになってきています。将来、銀行員は会社や個人宅に赴いて対応することが中心となり、店舗での有人対応はますます減る可能性が高いと考えられます。
社会の空気や地域性からの影響
こうした動きが加速している要因は、コスト削減が急務となっているからです。今、金融機関には預貯金が十分にあります。通常なら企業の設備投資が活発化することなどにより、高い金利で融資ができますが、将来への不安などから企業の投資の動きが鈍いのです。金融機関は預貯金を運用して利益を得るため、金利を低くしてでも貸し出さなくてはならず、利益を出しにくいのです。また、金融は意外にも地域の風習に左右される側面があります。山形県には、「年間三隣亡」という風習があり、該当年に家を建てると向こう三軒両隣が滅び、その家だけが栄えると伝えられています。現代でもその年は住宅建設が減り、地域経済に影響を与えています。また東海エリアには、貸出金利がほかの地域に比べて低いといういわゆる「名古屋金利」があります。ものづくり産業が多い、無借金志向といった地域の特性から、金利を低くしないと借りてくれない傾向があるのです。
金融を知ると日本が見えてくる
ほかにも大災害時の対応や、銀行が破綻したとき、リーマンショックなど海外から影響を受けたときといったさまざまな視点で金融を検証できます。すると、生活と密接につながっている、日本の金融の現状が見えてきます。金融は社会から影響を受けると同時に、社会に影響を与えるもので、それはいつの時代も変わりません。ますますグローバル化し、急激に変化している金融の実情を知ることが大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 現代マネジメント学部 現代マネジメント学科 教授 植林 茂 先生
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