教科書ではわからない、地域と人々の生活から読み解く近現代史
戦争は地域をどう変えたか
昭和の戦時期から高度成長期にかけて、日本の地域社会は大きく変わりました。例えば、戦争中は各地に軍需工場が建設されて、農村が工業地帯へと姿を変えていきました。例えば、神戸の西側にある明石市の中部・西部(当時はまだ明石市には属していませんでした)にはもともと多くの田畑や溜池がありましたが、戦時中に多くの工場が建てられました。これにより、地域には工場労働者が増えたり、道路の整備がなされるなど、地域社会の構造が大きく変わりました。一方、農民たちはただ黙って従うだけではなく、自分たちの土地を守るために工場や行政と交渉するなど、生活を守るために行動を取っていたのです。
地域の課題と住民の行動
戦後の復興期から高度成長期にかけても、地域はさまざまな変化を経験し、住民による社会運動が展開されました。例えば、伊丹航空基地(現在の大阪国際空港)周辺では、基地の拡張に反対する運動がありました。この運動は農地を守るために行われ、多くの農民が自分たちの生活のために立ち上がったのです。一方、基地周辺では商業が繁盛して地域の政治・経済に影響を与えるようにもなりました。このように、地域で発生した出来事や問題に対し、人々がどのような立場から向き合い、行動を起こしたのかという歴史を知ることは、現代社会の問題を理解する上でも重要なヒントを与えてくれます。
歴史を地域から読み解く
地域やそこに暮らす人々に根ざした歴史研究は、私たちに新たな視座を提供してくれます。一口に「日本の歴史」と言っても、その実態は地域によってさまざまです。教科書に書かれているような国家レベルの歴史ではとらえきれない、地域独自の事情や人々の営みが存在するのです。今日の日本社会は、こうした一つ一つの地域、一人一人の人間の営みの上に成り立っています。地域の歴史から導き出される教訓は、現在を生きる私たちにとっても示唆に富むものです。地域の歴史研究は、過去と現在をつなぎ、未来への指針を与える学問だと言えるでしょう。
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