講義No.14133 史学・地理学

教科書ではわからない、地域と人々の生活から読み解く近現代史

教科書ではわからない、地域と人々の生活から読み解く近現代史

戦争は地域をどう変えたか

昭和の戦時期から高度成長期にかけて、日本の地域社会は大きく変わりました。例えば、戦争中は各地に軍需工場が建設されて、農村が工業地帯へと姿を変えていきました。例えば、神戸の西側にある明石市の中部・西部(当時はまだ明石市には属していませんでした)にはもともと多くの田畑や溜池がありましたが、戦時中に多くの工場が建てられました。これにより、地域には工場労働者が増えたり、道路の整備がなされるなど、地域社会の構造が大きく変わりました。一方、農民たちはただ黙って従うだけではなく、自分たちの土地を守るために工場や行政と交渉するなど、生活を守るために行動を取っていたのです。

地域の課題と住民の行動

戦後の復興期から高度成長期にかけても、地域はさまざまな変化を経験し、住民による社会運動が展開されました。例えば、伊丹航空基地(現在の大阪国際空港)周辺では、基地の拡張に反対する運動がありました。この運動は農地を守るために行われ、多くの農民が自分たちの生活のために立ち上がったのです。一方、基地周辺では商業が繁盛して地域の政治・経済に影響を与えるようにもなりました。このように、地域で発生した出来事や問題に対し、人々がどのような立場から向き合い、行動を起こしたのかという歴史を知ることは、現代社会の問題を理解する上でも重要なヒントを与えてくれます。

歴史を地域から読み解く

地域やそこに暮らす人々に根ざした歴史研究は、私たちに新たな視座を提供してくれます。一口に「日本の歴史」と言っても、その実態は地域によってさまざまです。教科書に書かれているような国家レベルの歴史ではとらえきれない、地域独自の事情や人々の営みが存在するのです。今日の日本社会は、こうした一つ一つの地域、一人一人の人間の営みの上に成り立っています。地域の歴史から導き出される教訓は、現在を生きる私たちにとっても示唆に富むものです。地域の歴史研究は、過去と現在をつなぎ、未来への指針を与える学問だと言えるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

武庫川女子大学 文学部 歴史文化学科 講師 本井 優太郎 先生

武庫川女子大学 文学部 歴史文化学科 講師 本井 優太郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

戦後史、日本近現代史

先生が目指すSDGs

メッセージ

日常の何気ない部分に「気づき」を発見してみましょう。小さな好奇心が、将来の道を切り開く原動力になります。そのような何気ない要素の1つが「地域」です。あなたが普段暮らしている身近な地域にも、意外な歴史が隠れているかもしれません。まずは、あなたの家族が生きてきた歴史や、地域の変化などに注目してみましょう。歴史は暗記科目ではなく、因果関係を探究する学問です。歴史を通して現在を正しく理解し、未来への指針を得ることができます。もしあなたが歴史に興味があるなら、ぜひ本学で一緒に学びましょう!

武庫川女子大学に関心を持ったあなたは

『一生を描ききる女性力を。』をVisionに掲げる日本最大の女子総合大学。2023年4月、新たに心理・社会福祉学部、社会情報学部、スポーツマネジメント学科(健康・スポーツ科学部)が誕生。2024年4月には、歴史文化学科(文学部)が誕生し、12学部20学科の女子総合大学に進化しました。文系、理系、スポーツ、芸術系まで多種多様な学びに加え、キャリアセンター・学校教育センターを中心に就職サポートも充実。自らの意志と行動力で可能性を拡げ、生涯を切り拓いていく女性を育成しています。