「経済統計」が教えてくれる本当の経済状況
「経済統計」とは
テレビや新聞などで「GDP(国内総生産)」や「完全失業率」という言葉を見聞きすることがあると思います。こうした指標は経済統計と呼ばれ、経済におけるさまざまな現象を人々に伝えたり、統計学の知見を生かして実証分析する際に使われます。「日本の景気はどうなっているのか」「今後の経済状況はどうなるのか」といった問題は非常に漠然としていますが、経済統計を分析することでより実態に近づくことができます。学問の世界では経済統計学という分野で研究されており、経済統計の専門家の意見は内閣府などの行政機関に直接伝えられることもあります。
2種類の調査方法
経済統計は大きく2種類に分類されます。1つ目は「基礎統計」といって、調査票などを対象に配付し、結果を直接集計する方法です。例えば、5年に1度行われる国勢調査がこれにあたります。2つ目は、さまざまなところで集計・発表される統計を一定のルールで組み合わせて計算する「加工統計」と呼ばれる方法で、例えば、GDPがこれに該当します。加工統計は、単純に複数の統計を組み合わせて算出できるものではありません。GDPに含まれる統計項目は多岐にわたり、GDP自体も「支出」「生産」「分配」の3面の観点から考察されており、GDPを算出するには非常に高度な専門性が求められます。
素材と技術の組み合わせ
加工統計の代表であるGDPの算出には課題もあります。まず素材となる統計データの収集に関して、GDPは製造業と非製造業の統計が組み合わされますが、製造業はデータの収集が比較的しやすいのに対し、非製造業は幅広い業種と規模の事業者が存在するため現状把握が難しい面があります。また、統計を正しく組み合わせる方法においても、GDPの三面のうち、現状では「生産」と「分配」をほぼイコールとみなしていますが、その是非は議論の対象になっています。こうした素材と技術の組み合わせが正しく行われているかをしっかりとチェックし、修正すべき点を指摘していくことも経済統計学の重要な役割です。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 経済学部 経済学科 教授 飯塚 信夫 先生
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