心の進化:観察から「心」のなぜに迫る

心の進化:観察から「心」のなぜに迫る

確立されていない「心」の定義

「心」とはなんでしょう。犬や猫に心があるでしょうか? カラスやカメ、あるいは昆虫や植物ではいかがでしょう。実は、この問いに明確に答えることはできません。「心」の定義にはさまざまなものがあるからです。
ただ、心は感情や表情、行動などと深い関わりがあることは確かです。そして人間はたいへん表情豊かな生き物です。では、ゴリラやチンパンジーではどうでしょう? 「イケメンゴリラ」というフレーズが話題になっていることから、ゴリラもそれなりに表情が豊かであると推測できます。では、魚や爬虫類では? このように考えていくと、表情が豊かであるということと心の発達の間には深い関係があることがわかります。

進化という視点から心を読み解く

心の有無や発達の度合いに違いがあるということは、それぞれの生物が生きる上で、これらの特徴を必要とするか否かが大きく影響していると考えられます。人間は、進化の過程で必要だから心を発達させ、一人ひとり違う顔と豊かな表情を手に入れたのです。人間は複雑な社会関係を持つことで、環境に適応し、生き残ってきたといえます。そして、複雑な社会関係を構築し、スムーズに運ぶための「装置」が心であると考えられます。このような視点から、心をとらえてみることで、心の見方も変わってくるのです。

行動観察がビジネスへの活用にも

目に見えない「心」を見えるようにする方法の一つが「行動観察」です。日常的な人間行動をきちんとした方法を用いて観察することで、普段はつい見過ごしてしまいがちな行動の意味や動機が見えてくることもあります。例えば、動物園や水族館でのお客さんの行動、あるいは、コンビニや電車内、待ち合わせ場所での行動です。こうした日常的な行動の意味を明らかにすることで、動物園や水族館の展示方法を改善し集客増につなげたり、コンビニの売り上げを増やしたりすることも可能です。行動観察という方法は、社会の中でも有効な武器となるのです。

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椙山女学園大学 人間関係学部 心理学科 教授 五百部 裕 先生

椙山女学園大学 人間関係学部 心理学科 教授 五百部 裕 先生

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人類学

メッセージ

私は人類の進化を研究する人類学者です。人類学と心理学の接点は行動観察という手法にあります。人類学では人類の特徴を、そして心理学では心の不思議を明らかにするために、ともにこの手法を用います。人類の特徴の一つに発達した心を持つという点が挙げられます。ではなぜ、人類は発達した心を手に入れたのでしょうか。心を「進化の産物」ととらえることで、心の不思議について心理学とは異なったアプローチからも迫れるのです。人類の行動を進化という視点から研究することで、心の進化についても理解を深めていきたいと考えています。

先生への質問

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「わたしは、心理学を、社会に生かす。」
こころの不思議に科学的にアプローチし、こころの学びを社会に生かす。

社会で高まるこころへのニーズに応えるために、こころについて幅広く学び、その学びを社会に生かすことのできる人材を育成します。ストレスへの対処や対人関係の円滑化といった「心理学的マネジメント力」を習得。さらに、人の行動やこころに科学的にアプローチし、新たな提言を行う「心理学的デザイン力」を身に付けます。