「社会に必要とされる」商品デザインとは
「人」が中心にいる生活科学のデザイン
日本のデザイン教育は芸術学から始まり、工学で発展しました。そして今、注目されているのが生活科学分野のデザインです。生活科学の中心には「人」がいます。人のことを考えたデザインとはどういうことでしょうか?
社会は、赤ちゃんやお年寄り、障がい者などさまざまな人で構成されています。まずは、対象となる人とものとの関係を数値として科学的に分析することがデザイン学の入り口になります。その上で材料の特性とつくり方を考察するのが、デザイン学の出口となり、この経緯を通じて「人に貢献できるもの」をつくることができます。単に造形を考えればいいわけではないのです。
科学的実証に基づく最適なデザイン
例えば、障がい者の人が使う自助具は、ひと目で障がい者用とわかる道具であることが一般的です。しかし、これが「カッコイイ道具」であったらどうでしょう。使いやすいだけでなく、デザイン性が高く生活空間になじむアイテムであってもいいはずです。
そんなコンセプトで産学協同によって障がい者向けの包丁を開発し、実用化した事例があります。まずは片手のみで安定して使える形、座位姿勢でも負担がかからない形を探るために、グリップや刃の角度を少しずつ変えて何度も科学的に数値化し、分析と検証を繰り返し、その結果に基づいて、生産方法も考慮しながら理想のデザインに導いたのです。
よく考えられたものには社会を変える力がある
また、理想の座り心地と使い心地のよいクッションを作るための検証をすると、異なるメーカーの素材の組み合わせが最適だったりします。人と材料との関係を検証することで、「人が本当に欲しいと思えるクッション」を実現できます。医療や福祉だけでなく、身近なあらゆるものにおいて、検証する余地は十分にあるのです。
実際に使うアイテムの機能性やデザインが変わると、空間が変わり、使っている人の気持ちも変わってきます。ものの力で社会を変えることもできるのです。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 生活科学部 生活環境デザイン学科 教授 滝本 成人 先生
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